ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。現在は隠れゲイ@福岡。過去の思い出や現在のことを綴っていきます。

同性とのファーストキス<9>

 翌日の授業中、ボクはK君の様子を伺っていた。K君に対しては、一度も恋愛感情を抱いたことがないし、カッコいいとか可愛いとか思ったこともなかった。ボクの中でただの同級生というポジションだった。劇中とはいえ、好きでもない人とキスなんてしたくないけど、ボクよりもK君の方が可哀想だった思った。ボクは同性愛者だし、いつか同性ともキスしたいという願望を持っていた。それに引き換え、K君は異性愛者のはずだった。ジャイケンで負けた時の彼の心中を思うといたたまれなくなった。ボクとキスすると決まった後も、特に感情を出すこともなく、しょんぼりとした感じで黙っていた。彼が何を考えているのか、よく分からなかったし、訊く勇気もなかった。

 ボクは視線をK君からN君に変えた。

 この際、演技でもいいからN君とキスできればよかったな。

 そんな不埒なことを考えていた。N君を見ていると、思わず微笑みそうになるけど、授業中なので必死でこらえていた。もし劇中とはいえ、N君とキスできるのなら、修学旅行が楽しみで仕方がなかったに違いない。冒頭でも書いたけど、深夜遅くまで起きて、あれこれ妄想している中には、N君とキスしている妄想もあるわけで、それが妄想ではなく現実になるのだ。ただボクがN君に恋愛感情を抱いているのは、N君本が知らないだけで、ほぼ全ての同級生が知っていた。きっと邪魔されるに違いないはずだ。

 結局、ボクらのグループは修学旅行まで一度も集まって、打ち合わせすることもなく当日を迎えた。もちろんセリフも何も決まっておらず、各グループに分かれて京都市内を観光している最中に打ち合わせをしようという話になっていた。でも、そんな器用なことができるわけがなかった。女装をするメンバーは衣装や化粧道具など持って来たようで荷物が多かった。みんな女装はしたかったようで真剣なのだ。女装する必要のないボクとK君と荷物も少なくて身軽だった。

 ボクは憂鬱な気持ちを抱えながら、京都駅の新幹線ホームに降り立った

<つづく>

プールの監視員にドキドキしてます

前職のノンケ友人(村上)との会話でカミングアウト済み関係です

神原:少し前に体の衰えが激しいと記事に書いたけど、一月前から週に三回のペースでプールに通い始めたよ。 

 

村上:どこかのジムに通い始めたの?

神原:いやいや。ジムじゃなくて市営プールだよ。ジムも考えたんだけど、料金が高いし、それに筋トレには興味がないから市営プールに通い始めました。子供の時に水泳を無理矢理に習わされたから、平泳ぎ、クロール、背泳ぎ、バタフライと一通り泳げるんだけど、まともに泳いだのは、十年ぶりぐらいのような気がする。

村上:それはそれは……筋肉痛が大変だったろうね。

神原:久しぶりに泳いだら、体が覚えてるのか普通に泳げたんで調子に乗って、七百メートルくらい泳いだら、急に肩のあたりが痛くてたまらなくなってプールから上がって、服を着るのに腕が痛くて上がらなくて、一人で更衣室でもがいてました。服を着るのに三分くらい更衣室で服とバトルしてました。腕の角度を変えたりして、なんとか服を着ることができた……一時は誰かに助けを呼ぶか、上半身裸で帰ることを考えてました。まぁ……三回目くらいから筋肉痛も無くなって、一・五キロくらい泳げるようになったけど。体を動かすのは気持ちがいいね。それに嫌なことも忘れることができるよ。

村上:どうせ嫌なことを忘れるついでに、水着姿の男性にトキめいてたという訳か……(`Д´)

神原:それが市営プールのせいか、お爺さんやお婆さんが多くて、若い男性は滅多にいないんだ。でも泳いでる人にはカッコいい人はいないけど、監視員に可愛い子がいるよ。

村上:君にとっての可愛い子って、もちろん男だよね?

神原:もちろん! 年下だから恋愛対象にはならないけど、二十代中盤くらいで細身の可愛い顔した子だよ。細身だからゲイ受けは良くないかもしれないけど。彼の方を見ないようにしてるのに、自然と視線が彼の方に向いてしまう。このままでは危ないと思って、ゴーグルで視線を隠しながら、こっそり見ている自分がいるヾ(*´∀`*)ノ

村上:君は監視員を監視してるのか(;^ω^)

神原:平泳ぎで息継ぎのため顔を出す時、視線の先に彼がいると、体はしんどいのに胸キュンしながら泳いでる自分がいます。あぁ……俺は今、彼に向かって泳いでるんだ。とかアホ丸出しですけど。

村上:まさか監視員の子も、同性からそんな視線で見られてるなんて思わないだろうね。

神原:監視員の子と視線が合うと、意味もなく頑張って泳いでしまう情けない自分がいます。そして泳ぎすぎて翌日はバテバテ状態になってしまう (>ヘ<)

村上:とりあえず変な気は起こさないようね。可愛い子も鑑賞できて、体も鍛えられて、一石二鳥だね。でも肉体は若返ってるかもしれないけど、精神的にはおっさん化しているね……

深夜のカミングアウト<2>

 それにしても高校時代、ホモのキャラクターを散々に演じてきたけど、社会人になってから、それが役に立つとは思わなかった。

「○○さん(男性)って可愛いですよね」
「○○会社なら、○○さん(男性)が一番カッコよくないですか?」
「○○さん(男性)の○○(体の部位)って、見てると萌えますよね」

 やけくそに近いけど、こんな発言が次々とボクの口から出て来た。ちなみにボクの外見は、かなり真面目そうに見えるようだ。そんな真面目そうな人間が、さらりとこんな発言するのだ。聞いている方は、かなりギャップがあるようだ。ただ……これらの発言も本気で思っている訳ではなくて、あくまで冗談で言っていると思わせなくてはならなかった。ホモだと疑われて逃げ道が無くなったボクの取った道は、本当にホモだけどホモを装った人なのだ。一度でもそのキャラクターを演じ始めたら引き返すことはできない。

 そもそもボクは本当にホモなのであって、それなのに何故かホモではないと思わせるためにホモの演技をしていて、ただホモの演技をしておるのか、素のホモの自分が出ているのか、自分でも分からなくなる時があった。あぁ……文章を書いていて、自分でもこんがらがってくる。そしてもう一点、ややこしいのが、ボクは付き合っている彼女がいることになっているのだ。一度ついた嘘を否定することはできなかった。存在しない彼女の嘘をつくくらいならホモの演技をしている方が楽だった。
 
 自分から招いた種とはいえ本当に複雑だ。とにかく同僚には、ボクはホモでなくてホモを装っている人という認識でいてもらう必要があるのだ。

 それに先輩が指摘するように、確かに新人の男性社員には優しかったと思う。でもそれは男性社員が若い女性社員に優しくするのと同じようなものだ。ボクは同年代か年上の方しか恋愛の対象にはならない。でもやっぱり若い子は可愛いのだ。若い子に限らず好みのタイプから仕事を頼まれるとノリノリで優先度を上げて対応している自分がいる。

<つづく>

同性とのファーストキス<8>

 確かにA君の言う通り、劇のオチとしては同性同士でキスする案は面白いかもしれない。でも同性同士でキスするのなんてみんな嫌だった。それに同性愛者のボクですら嫌だった。実際にはキスする二人のうち、ボクに関しては確定しているので、誰がボクとキスするのかを選ぶという問題だけだった。もし同性同士でキスをすれば、その日から同級生の間では「男同士でキスした人」という烙印を押させれるであろうことは想像できた。

「神原とキスするとか絶対に嫌だ……」

 誰かが呟いた。同じグループになっている顔ぶれを見てもボクの好きな相手はいなかった。ボクも含めてクラス内のイケてないメンバーが勢揃いしていた。そりゃ……ボクだって好みのタイプがいればキスも悪くはなかったけど、それでも劇中の衆人環視の状態でキスはしたくなかった。それにその場にはN君もいる訳で、好きな人の前で、好きでもない人と演技とはいえキスするなんて辛かった。

「ジャイケンで決める? 負けた奴が神原とキスするってことでいい?」
「そうだね。そうしようか……」

 みんな気が乗らないけど、諦めた雰囲気になって輪になってジャンケンを始めた。

「最初はグー。ジャイケンポン!」

「よっしゃー」とか「げぇ」とか叫び声が聞こえた。ボクは誰とキスすることになるのか、固唾を飲んで見守った。何度かの勝負を重ねて、最後まで負け残った生徒が決まった。K君という天然ボケのキャラクターで、ボクと同じくらいの身長も背も低くて、目立たない生徒だった。ボクらは同じクラスというだけで、特に仲がよい訳ではなく二人きりで話したこともなかった。ジャイケンに最後まで負け続けた彼はヒキった顔をしていた。ボクはなんて声をかけたらいいのかわからなかったけど慰めに声をかけた。

「じぁ……よろしくお願いします」
「あっ……うん。よろしく」

 ボクらはお互いの唇を見ながら、お互いがキスする姿を思い浮かべて憂鬱になっていた。

<つづく>

同性とのファーストキス<7>

「じゃあ、これであらすじは決まったね」

 ボクらはあらすじが決まって安心していた。そう思った矢先だった。

「オチが納得できないな……」

 A君がぼそっと呟いた。

「神原と結ばれるオチってどんな風になるのかな?」

 まだA君は納得できていないようだった。

「きっと……ボクと最後に出てくるメンバーが抱き合うんじゃない?」
「そういえば出てくる順番を考えてなかったけど、一番女装してして気持ち悪い奴が最後でいいよな?」
「はぁ……お前ら本当に分かってないよな」

 A君はヤレヤレという感じで呆れた感じの態度を取った。

「一番最後の奴は女装したら駄目だよ。さっきも言ったけど普通の男の姿のままで出てくるべきだよ」
「あっ……そうか男同士で抱き合ってる方が気持ち悪いのか」
「確かにストーリー的にも女装した奴が次々に出てくるけど、最終的に神原が選ぶのが普通の男って方が意外性があるかも」

 A君の異常な洞察力に、ボクらはただ感心していた。こいつは将来何の仕事に就くんだろうかと気になった。

「それに抱き合うだけじゃ物足りないな。ここは男同士でキスするのはどうかな?」

 A君から驚くべき提案がなされた。

「男同士でキス?」

 グループのメンバーが一同で「えぇ!」とか「嫌だ!」とか、悲鳴を上げて驚いていた。

「そりゃ……神原は男が好きだから問題ないだろうけど」

 ちょっと待て。勝手に決めないでほしい。ボクはまだ中学三年生だ。男同士でキスなんてしたことがない。女性を好きになる異性愛者なら可能性があるかもしれないけど、同性愛者で中学三年生でキスしている人はかなり稀だと思う。それに同性愛者とはいっても、好きでもない同性とキスするのは嫌だ。

<つづく>

同性とのファーストキス<6>

 劇の内容を無視して、みんなどんな女装をするのか真剣に考えていた。もはや自分たちの女装願望を満たせれば劇の成功も失敗も関係ないようだった。でも主人公役のボクは最初から最後まで登場する可能性があるわけで、失敗したら劇上で居たたまれない状況になってしまう。ちゃんと内容を考えてセリフも覚えておかなくてはいけない。

「それでセリフとかどうするの?」
 女装トークが落ち着くのを待って、ボクは会議を進めるように促した。

「とりあえず……俺らが神原を口説くって設定でいいよ」
「ボクを口説いてくるの?」

 観衆の中で女装メンバーに口説かれるのかと思うと頭が痛かった。

「俺らが求婚するから、神原はホモぽい仕草をしながら曖昧に求婚を断ってくれればいいよ」
「そうそう。いつもの通りに神原らしくホモぽい仕草してればいいから」
「神原はセリフもアドリブでいつもの通りにホモぽくしてればいいって」

 つまり素のボクでいればいいってことかな。A君の「神原は男のままが気持ち悪い」発言に続いて、さらに酷いことを言われている気がした。でも全く意味のない自信だけど、ホモぽい仕草には自信があった。普段あから同級生の前でしている演技をすればいいだけのことだったので安心した。

「じゃあ……セリフはアドリブでなんとかするけどオチはどうしようか?」

 断り続けた結果、最後に劇の結末がどうなるのか気になった。

「そうだな……俺らが一人一人神原を口説いて、振られていくけど、やっぱりハッピーエンドにして、最後の奴が神原と結ばれるって展開はどうかな?」
「おぉ! それならオチがつくね」

 どうやら話の大筋は決まったようだ。ボクは男のままで登場して、女装したメンバーに求婚されて断り続けた結果、最後に結ばれるというあらすじになった。

<つづく>

同性とのファーストキス<5>

「なんで女装は止めた方がいいの?」

 みんなA君の言葉が理解できなくて、不思議がっていた。ボクはA君から「神原が傷ついてるだろ。気持ちを考えて止めてやれよ」とか「神原だって好きで同性愛者になったんじゃないんだ」とか格調が高くて友情溢れる泣けるような言葉を期待していた。

「よく考えてみろよ。神原は男の格好の方が気持ち悪いんだよ」
「男の格好の方が気持ち悪い?」

 どうやら期待は裏切られたようだ。

「つまり男の格好で男を好きになるから気持ち悪いんだよ。むしろ中途半端に女の格好をすると気持ち悪さが半減するんだよ」
「なるほどね」
「確かに女装している人が男を好きってシュチエーションよりも、男の格好のまま男が好きって気持ちが悪いかも」

 次々とA君の意見に賛同が集まった。

「だから下手に女装させるより。神原は男の格好のままのホモキャラって設定でストーリーを考えようぜ」

 ボクも一瞬はA君の意見に納得しかけたが、随分と酷いことを言われていることに気がついた。つまりボクは素のままでも気持ち悪いということかな……あまり深く考えると傷つきそうなので、それ以上は思考停止することにした。

「じゃあ……神原は男の格好ままで、次々と男が舞台に出て来て神原を口説くか、それか神原に口説かれるっていうのはどうかな?」
「それがいいね!」
「それなら俺らの方が女装とかしたら面白いよね?」
「それいいな。前から女装とかしてみたかったんだ」

 次々と女装の願望者が現れた。

「俺はセーラー服を着たいな」
「えぇ! 俺もセーラー服着たかったのにかぶちゃ面白くないよな」
「俺は看護師の格好しようかな」

 こんなにも女装願望を持っている人がいるなんて思わなかった。あくまで劇の芝居ということを名目を利用して、ついでに自分の女装願望を叶えたいようだ。メンバーの中には女装を嫌がってる人もいたけど、仕方がないねという顔をしながら若干嬉しそうに折れていた。むしろホモ扱いされているボクの方が女装に対して拒絶感が強かったのが意外だった。

<つづく>