住吉奇譚集<20>

 この話は2017年6月3日の夜から4日の朝にかけての福岡市の住吉を舞台に起こった出来事を詳細に綴ったものだ。

 今回の二件の店には今後は行くことはないだろう。どちらの店も意図して行った訳ではないけれど、あまりに対照的な店だった。一件目は若者向けの店で、二件目は年配者向けの店だった。一件目の店は、既にボクの年齢がオーバーしている気がした。二件目の店は、年を重ねれば行く可能性もあるけど恐らく二十年以上は先になるだろう。移り変わりの激しい業界だ。その時にはあの店は無くなっているだろう。それに仮にあの店の対象年齢になったとしても行きたいとは思えないけれど。

 ボクは三十五歳だ。この文章を書いているうちに、一つ年を重ねて三十六歳になってしまった。今回行った2つの店がターゲットにしている層の間(はざま)のような年齢だった。家に帰宅して二日連休だったのに、なかなか一晩の疲れが取れなかった。つくづく自分の体の老いというものを思い知らされる。もうしばらくは住吉に遊びに行くことはないだろう。

 老いというものは誰にでも等しく訪れる。この頃、よく綺麗に老いていくにはどうしたらいいのだろうと考えている。外見的な面だけでなく内面的なものも含めてだ。ゲイ業界というものは外見が重視されることが多い。でもそれは仕方がないことだと思う。

 ゲイであることを隠して生きていればゲイ同士と精神的に触れ合うことは難しい。有料ハッテン場のような、その場限りの肉体関係を重ねていれば、どうしても外見的なものが重視されてくるだろう。でも年齢を重ねてくれば外見はどんどん衰えてくる。それに対して無理に抗って若作りしてもしょうがないだろう。老いというものを受入れつつ外見的も内面的にも綺麗に老いていくにはどうすればいいのか、これからのボクの課題だと考えている。

 この『住吉奇譚集』は将来の自分宛に書いたものだ。「あぁ……昔はバカなことをしてたな」と思うのか、「今のボクと変わらないな」と思うのか、十年後、二十年後に読んだ自分の反応がどちらになるのか考えると今から楽しみだ。

<終わり>