第12章 ノンケに生まれ変わりたい

ノンケに生まれ変わりたい<23>

大学を卒業して彼女は先に京都から引っ越すことになった。彼女が乗ったバスを見送った後、長いメールを受け取った。 今まで一緒にいてくれてありがとう。これからもよろしくね。 そう書かれていた。 あれから、10年以上の時間が流れた。 彼女は未だに独身で…

ノンケに生まれ変わりたい<22>

彼女が「MIXI」の日記という公開された場所に書き込んだものだから、ボクらのやりとりは同級生たちに全て筒抜けになってしまった。 しばらくして同級生たちは、 「神原は、彼女を独占しようと、あれこれ画策した挙句、彼女を公開の場で捨てた最低な奴」 とい…

ノンケに生まれ変わりたい<21>

いつの間にか、好きな人ができたんですね。その人と付き合うことになったら紹介してくださいね。 自分の入力した文章を読み直すと、そらぞらしくて吐き気がして自己嫌悪になる。付き合うも紹介するもない。相手はボク自身なのだ。 ボクは彼女が真剣に書いた…

ノンケに生まれ変わりたい<20>

少し前から好きな人がいる。 最初の頃は仲のいい友達とか思っていなかった。 でも彼は私が辛い時にいつも側にいて優しくしてくれた。 気がつくと彼のことが好きになっていた。 でも、彼は私のことが好きじゃないと思う。 実際には文章が半端なくて、原稿用紙…

ノンケに生まれ変わりたい<19>

彼女のアパートから逃げ帰って数日後の夜。風呂から上がってパソコンデスクに座っていた。 ゲイの出会い系の掲示板や、有料ハッテン場の掲示板を眺めていた。それに、このサイトで何度も名前が出ている『京都ハッテン場ガイド』を眺めていた。このサイトには…

ノンケに生まれ変わりたい<18>

ノンケの男性なら、彼女に恋愛感情を抱いていなくても、やっぱり抱きしめたりするんだろうか? ゲイの世界を足を踏み込んでからというもの、有料ハッテン場で会った、見知らぬ男性と肉体関係を持つなんてザラだった。そこに愛情関係なんてものは全くない。も…

ノンケに生まれ変わりたい<17>

そんなこんなで、ボクは彼女から恋愛感情を抱かれてると気がついてからも、特に何も行動を起こすことはなかった。ただ卒業まで、今のまま友達関係が続けばいいと思っていた。 「結局、一番最後まで残った男性が神原君だった。いつも側にいて優しくしてくれる…

ノンケに生まれ変わりたい<16>

「最近、好きな人ができたかもしれない」 片原さんと大学近くの繁華街で晩御飯を食べていると、そんなことを聞かされた。 「へぇーそうなんですか。知ってる人ですか?」「うーん。どうだろう。知ってるかもしれない」 「知ってるかもしれない」って、変な回…

ノンケに生まれ変わりたい<15>

この頃、ちょうどサークル活動に対して嫌気がさしていた。大学生同士で集まって騒いだところで、これ以上は得るものがないように感じていた。それにサークルを辞めたついでに、そのまま大学からも距離を置くことにした。ちょうど別にやりたいことが見つかっ…

ノンケに生まれ変わりたい<14>

彼女がT先輩と付き合おうがボクには知ったことではない。彼女とはただの友達という関係で反対する立場でもない。 彼女が自由意思で選べばいい。 そう思って、仮に彼女がT先輩と付き合ったとしても全く関係ないと思っていた。でも一方で彼女がT先輩を選ばない…

ノンケに生まれ変わりたい<13>

ボクと片原さんは、三条京阪で待ち合わせしていた。 そこに「第二の男」が現れた。 ボクの方が先に待ち合わせ場所に着いて待っていると、彼女に連れ添うように「T先輩」が一緒に来た。 T先輩は同じサークルの仲間だった。彼女から事前に連絡をもらっていたか…

ノンケに生まれ変わりたい<12>

彼女が恋をしたのは同じサークルの一つ年上の男性だった。 ボクはその事実を知った時、全くショックを受けなかった。ただの友達としてしか彼女のことを思っていなかったからだ。 しばらくして彼女の片思いは成就して、二人は恋人関係になった。 良かったね。…

ノンケに生まれ変わりたい<11>

この片原さんとの会話後、しばらくの間、杉本君が京都に来ている事実に怯えていた。いつ彼と出くわさないか怯えていた。 「よっ。ホモ。久しぶり!」 そんな気楽な感じで、いきなり声をかけられても困る。大学時代のボクは完全にゲイである側面を隠して生き…

ノンケに生まれ変わりたい<10>

「本当に知らないの?」 ボクは嘘をついたけど、片原さんの目は疑いの色が入っていた。ボクは表情に出ないように心がけて嘘を続けた。 「いや〜本当に杉本なんて人は知らないよ」「そうなんだ?」「その杉本って人はどんな感じの人なの?」「髪は短めで、少…

ノンケに生まれ変わりたい<9>

ある日、ボクは片原さんといつものように大学近くのファミリーレストランで深夜遅くまで雑談をして過ごしていた。客の大半は同じ大学の生徒ばかりだった。いつも通りにボーイズラブトークなど、とりとめのない話ばかりしていた時だった。 「ねぇ……そういえば…

ノンケに生まれ変わりたい<8>

さらに話はそれるけど、ボクの家庭環境にも触れておく。 ボクの家庭は両親と三つ年上の兄と弟のボクの四人家族だ。ただ四人家族とは言っても、実質は三人家族に近かった。理由は父親がほとんど家にいなかったのだ。別に母親と仲が悪くて別居していた訳ではな…

ノンケに生まれ変わりたい<7>

大学時代だけで、一九二〇年代から一九七〇年代までの映画を四百本ぐらいは鑑賞した。お客に質問されたら機械で調べなくても、その作品がどこの棚にあるのか全て暗記していた。いつの間にかバイト先ではクラッシック映画担当になっていた。 ただ好きだった返…

ノンケに生まれ変わりたい<6>

ボクは特にクラッシック映画のコーナーの返却作業が好きだった。バイトが終わってからも、クラッシック映画をバイト先でレンタルして家で見ていた。 「神原さんって変わってますよね? 白黒映画ばっかりレンタルしてません?」 ある日、バイト仲間からそう指…

ノンケに生まれ変わりたい<5>

「あぁ……確かに○○君と○○君は怪しいですよね」 「わかってくれる? 他の男の人にこんな話してもヒかれるけどね」 ボクらは閉店する深夜二時くらいまで週に一回から二回はこんな馬鹿話をして二人で過ごしていた。 ここら辺でボクの大学生活に触れておく。 大学…

ノンケに生まれ変わりたい<4>

ボクらは待ち合わせの時間にバイト先で落ち合い、近くのファミレスに移動して雑談をしていた。バイト先の話やサークルの人間関係の話などを中心に話していたが、恋愛話をしている時にカタハラさんが言った。 「他の男の人と話すのと違って、神原くんと話して…

ノンケに生まれ変わりたい<3>

同性愛者であることの悩みに関して、何の進展もなく時間が過ぎ、大学1年生の冬を迎えつつあった。キャンパス内では次々とカップルが誕生していてベンチで楽しそうに話していた。 「羨ましいな・・・ボクにはいつになったら普通に彼女ができてベンチで楽しそ…

ノンケに生まれ変わりたい<2>

レジにたどり着いたボクはレジの店員に知り合いがいないことを確認した。そして他の客がいなくなったタイミングを見計らって急いでレジに向かい大人しい雰囲気の男性の店員に本を渡した。ボクは携帯電話でメールを打ってるフリをして、ひたすら目を合わせな…

ノンケに生まれ変わりたい<1>

銭湯での事件以降、同性愛者として生きることに希望が見出せなくなっていた。そして相変わらず大学時代から同性愛者であることを隠して生きているボクには好きな男性も女性もできていなかった。 同性愛が病気なのかはわからないけど、病院に行くなら精神科か…