第21章 出逢いたくなかった人

出逢いたくなかった人<9>

あれから10年以上経ったけど、ボクは今だに彼とどこかで出くわさないかと不安になる時がある。京都から離れて福岡に来ているにも関わらずだ。あの日に彼と会ってからゲイ向けの出会いの掲示板にほとんど書き込みをしなくなった。恐らくあの日以降に掲示板に…

出逢いたくなかった人<8>

彼から悲鳴のような書き込みがあって投稿の流れが一瞬だけ止まった。きっと投稿している人達も何が起こったのか状況が把握できなかったに違いない。ボクは更新ボタンを連打して次の投稿を待っていた。 あいつのアドレスに大量のイタズラメールが届くように仕…

出逢いたくなかった人<7>

この掲示板に書き込んでる奴らってクズばっかり!顔も性格も最低な奴らばっかり! 投稿者の氏名がボクと以前にメールのやり取りをしていた時と同じだった。それに投稿内容から見て彼だと思った。投稿内容は予想していたものと違ってボク自身に対する批判とい…

出逢いたくなかった人<6>

ボクは彼から来たメールを見て携帯を持つ手が震えた。もちろん彼のメールに返信をするつもりはなかった。ただ返信をしないでいると次のメールが送られてくることは間違いなかった。そして予想通りに5分以内にメールの着信音が鳴った。 返信まだー? きっと昨…

出逢いたくなかった人<5>

最初のメールの着信時間を見るとAM2:30を少し過ぎていた。ボクが彼と別れたのは21時半くらいで家に帰って寝たのが23時だった。それから朝の7時まで一度も目覚めることなく熟睡していた。どれだけ彼とのやりとりに緊張して疲れていたんだろうと思う。 会う予…

出逢いたくなかった人<4>

あっ……危なかったな。 ボクは彼が遠ざかって行く姿を確認すると逃げるようにその場を離れた。 はっきり言えばボクは彼から捨てられたことになるのかもしれないけど、嬉しくてしょうがなかった。全く傷つかなかった。彼がいつのタイミングで次の相手にメール…

出逢いたくなかった人<3>

「トイレでヤるなんて嫌です」 ボクははっきりと断わった。きちんと嫌だという気持ちを伝えれば彼も理解してくれると思っていた。今まで何人かのゲイの人と会ってきたけど、きちんとこちらの気持ち伝えれば理解してくれた。でも彼は予想外の反応をした。 「…

出逢いたくなかった人<2>

ボクの目の前では20代後半の痩せている男性が笑っていた。いや……ボクの目の前にはそんな男性は存在しなかった。目の前で笑っている人はどんなに若く見積もっても30代後半もしくは40代にも見えるぐらいだった。そして痩せているどころか太っていて、お腹の肉…

出逢いたくなかった人<1>

「早く君も来なよ!」 ボクの目の先で笑顔で手招きしている男性がいる。その男性の目の前をクラクションを鳴らしながら何台もの車が凄い勢いで通り過ぎていった。 「えっ! 危ないですよ!」 ボクが戸惑っている間にも彼の前をクラクションを鳴らしながら車…