過去との決別<1>

「久しぶりに集まらない?」

 大学卒業を間近に迎え、帰省していると高校時代の同級生からメールが来た。

「いいですよ。どこで待ち合わせしますか?」
「高校の卒業式以来だね?○○駅前まで来れる?」

 高校を卒業して、全く顔を合わせていなかった。いや、わざと合わせないようにしてきたんだと思う。待ち合わせの場所に行くと、友人たちは先に来ていた。ボクと違い高校を卒業してからも頻繁に集まっていたらしい。

「久しぶりです〜」
「久しぶり!神原さん変わってないね〜」

 簡単に挨拶を交わして飲み屋に移動した。乾杯をして思い出話しをしながら飲み食いをしてたら、友人の一人が何気ない感じを装って聞いてきた。

「そういえば神原って・・・彼氏はできたの?」

 早速、この質問が来たか!と思ったが、予想していた質問だったので即答した。

「いいや!そもそも男にはもう興味がないよ。」

 同級生で集まるたびに、ボクの会話も出ていたのだろうけど、この回答に驚いたようで、他の友人達も会話に加わってきた。

「おい!神原が男好きじゃなくなったらしいよ」
「マジで!!ホモ直ったの?女に興味持てるようになったの?」

 此奴等・・・直球に言ってくるな。

「うん!もう男には興味なくなったよ。彼女もいるよ〜」

 なんでこんな会話を繰り広げているのかと思われるだろうけど、ボクには中学と高校時代に同級生に堂々とカミングアウトをしていた少し?異常な経歴がある。久しぶりに友人達と顔を合わせたのは、高校時代のカミングアウトを打ち消すためだった。別に彼らが信じてなくてもいい。とにかくボクの口からゲイじゃなくなったと言い切ることが大切だと思った。

<つづく>