過去との決別<3>

「はぁ?昔から冗談で言ってただけだよ。まさかそんなことするわけないから。男で抜くとか絶対するわけない。そんなのアホかキモいよ」

 ボクは慌ててすっとぼけたフォローを入れた。迷惑をかけてごめんね。とりあえず松田君に、「もう君に恋愛感情は抱いてないよ」とアピールするだけで精一杯だった。内容が内容だけにこれ以上は詮索されなかったけど、はっきり言い切って逃げ切った。

 飲み会も深夜に突入して徐々に眠るメンバーも出てきた中、急に同級生の一人が隣に座ってヒソヒソ話しかけてきた。

「実は最近、哲生がホモじゃないんだろうか?と思うことが度々あるんだよ。どこかの公園が男同士の出会いの場とか、何かよくわかないことをよく言ってるんだ」

 チラッと哲生を見てみたが、他の同級生と話すのに夢中でこちらの会話には気づいていなかった。

「へぇ・・・でもボクはホモじゃないからね。よくわからないよ」

 シラを切りながらボクは言った。ゲイの世界に生きていると心当たりがある。男同士の出会いの場と聞くと、もしかしてそれは「発展場」のことじゃないだろうか?何気なく哲生を観察してみたが、ゲイぽい仕草や服装はしていない。ボクのようにカミングアウトして生きていると、「彼はゲイじゃないんだろうか?」と言った相談や「ボクも君と同じなんだけど」と告白を受けたことが何回もある。

 高校時代の哲生のことを思い返すと、ゲイのボクを思いっきり否定する発言をしていた。「キモい」とか「死ね」とか言われた記憶がある。高校卒業後にゲイに目覚めたのかもしれない。ただ発展場の存在はインターネットで検索すれば見つかるし、それだけの情報で哲生をゲイと決めつけることはできないと思った。

<つづく>