母親にゲイとバレる日<2>

 既に同級生の大半はボクがゲイであることを知っていたけど、ボクのカミングアウトを聞いて、ゲイであることを本当に信じていた人達と、冗談と捉えている人達とで分かれていた。このまま周囲にカミングアウトをしていては、将来マズイことになるのかもしれない。高校生になって、ようやくカミングアウトのリスクを感じるようになった。

 ちょうど同じくらいの時期、ボクの高校に男性の教育実習生のKさんがいた。ボクとKさんは仲良くなり、二人で冗談を言い合ったりして話をする機会も多かったのだけれど、彼の教育実習がそろそろ終わる時期に差し掛かった頃にある事件が起こった。

 休み時間にKさんを交えて同級生の何人かと雑談をしているときだった。同級生の一人がKさんの前で唐突に恐ろしい発言をした。

「神原ってホモなんですよ」

 いきなりの言葉にボクの頭は真っ白になった。

「はぁ?何言ってんの?冗談に決まってるし!」

 突然の言葉に、慌てて否定したけど、Kさんの表情を見て凍りついてしまった。特に隠す素振りもなく、まるで気持ち悪い物を見るかのような顔をしてボクを見ていた。その後、Kさんのボク対する態度も豹変してしまい、ほとんど会話をすることもなく、距離を置いたまま教育実習が終わってしまった。

 同級生との間では、「気持ち悪い」など揶揄われても、露骨に顔に出して避けられることはなかった。子供と大人とではカミングアウトのリスクが違うのかもしれない。大人になってもカミングアウトしていて、いいのだろうか?と真剣に悩み始めた時期だった。

<つづく>