母親にゲイとバレる日<5>

 あの日以降、母親から「ホモなのか?」と問い詰められることは無かったが、いつ別の同級生の母親がバラしてしまうのではないか?と恐々していた。自分の子供がホモだと聞かされた時、母親はどんな気持ちになったのだろう。気になるけど、本人に聞くことはできない。母親の苦悩を思うと胸が締め付けられる。いっそカミングアウトしてしまえば楽なのかもしれないけど、そんな勇気は持てなかった。

「ゲイであることを隠して生きたい」

 カミングアウトを6年間もしてきて、ようやく隠したいという思いが出てきた。今後はゲイであることを隠して生きていく。翌朝、固く決心して学校に向かった。

「神原って男が好きなんだよね?」
「うん!そうだよ」

 駄目だ駄目だ!サービス精神が旺盛なのか、すぐにゲイであることを認めてしまう。隠すも何も6年間もカミングアウトして生きてきたのだ。当然、周囲の同級生はボクのことをゲイとして接してくる。もはやカミングアウトしていた過去を消すことはできない。地元近辺の大学に進学しても同級生に知り合いがいるだろう。大学を卒業して地元の会社に就職しても知り合いがいるかもしれない。地元から離れた大学に進学して、地元から離れた土地で就職して生きていこう。カミングアウトをしていた過去を消し去るには、ボク自身が地元から離れるしかないと決断した。地元から離れる決断をしたけど、まずはどこの大学に進学するのか考えた。同級生の進学先は地元近辺の大学が圧倒的だ。次に関東の大学を目指している人が多かった。ボクの地元から関西の大学を目指している人は少ないようだったので、関西の大学に行くことに決めた。大学生ではゲイであることを隠して新しい人生を歩んでいこうと決心した。

<つづく>