はじめてのカミングアウト<2>

 はじめてカミングアウトをして、自然に受けて入れてもらえた。ボクの人生に与えた影響は大きかった。それがとんでもない方向に影響を与えてしまうことになる。ボクの下手な演技はバレバレだったようで、N君に対する反応を不審に思う同級生は他にも出て来た。 藤田君のことは信頼していたので、カミングアウトをして良かったのかもしれない。しかし他の人にカミングアウトしてしまうのは問題があったように思う。

「前から思ってたんだけど、神原ってN君対して怪しくない?」

「うん。N君のこと好きだから……」

「えぇ! マジで神原って男が好きなの?」

 底なしのアホだ……大人になって振り返ってみると底なしのアホに思える。中学生時代のボクは人の悪意などに無頓着だったようだ。せっかく藤田君が隠してくれていたのに、自分から周囲にカミングアウトしてしまったのだ。藤田君にカミングアウトすることとの違いを理解していなかった。

「神原ってホモらしいよ!」

 この噂は瞬時に同級生の間に広まった。噂はどんどん広まっていき、小学生時代の同級生にも広まっていった。ボクがゲイであることを知らない同級生がほとんどいない状態にまで進んでしまった。そして、なぜか奇跡的にN君本人には伝わっていなかった。

「神原がホモでお前のことが好きらしいよ」

 なかなかN君本人に対して言いづらい内容だ。それにN君が少し変わった人扱いをされていたのが幸いだったようだ。N君が好きということよりそもそもゲイであることを公に認めている人が珍しかったようだ。ボクの中学生時代はいじめの問題がニュースが取り上げられ始めた時期だった。ゲイと存在を気持ち悪がれ、いじめの対象にされてもおかしくなかったと思う。しかし 同級生の間では、気持ち悪いという感情の前に、ゲイという人間に対する好奇心が勝ったようで、面と向かって嫌がらせをしてくる同級生はいなかった。

「神原ってホモなの? N君のことが好きなの?」

「(ホモとかいうなよ……)うん! そうだよ」

 何度、同じ質問を受けて来ただろう。その度に、否定することなくゲイであることを認めていた。

<つづく>