はじめて会った同性愛仲間<8>

ヒロト君と同性愛について話したのは、この機会切りだった。

 

間もなく予備校の夏期講習が終わってしまい、2人で話す機会も無くなった。新学期が始まり、ヒロト君はヨウスケ君と仲良く話しているし、時々僕のことを見てくる。ヒロト君が同性愛者なのか僕に質問してくる同級生は相変わらずいたけど、適当に否定しておいた。ただ彼との縁は、まだ思いもよらない形で続いていくことになる。

 

大人になって振り返ると、きっとヒロト君は僕のことが好きというよりは他に選択肢がなかったのではないか?と思う。

 

同性愛者が職場や学校で恋愛相手を見つけるのは難しい。僕がどんなにヨウスケ君のことが好きでも、ヨウスケ君が同性愛者ではない限り肉体的に結ばれることは絶対にない。僕の脳内だけで実際にはありえない妄想をして過ごすしかないのだ。恋愛相手は同性愛者という限られた中で探すしかない。たまたまヒロト君にとって僕のような同性愛者であることを公にしている生徒がいたことで、僕に対して興味をもってしまったんだと思う。肉体的な関係を結ぶためにも、第一の前提条件が自分と同じ同性愛者であることだからだ。

 

ただ、これは大人になってから感じるようになったのだけれど、僕は高校時代に彼のような人と出会えたことによって救われていたのかもしれない。

 

自分と同じような同性愛者が、この世にいることを知ったこと。そして一番大きいのが、自分に対して好意を向けてくれる人が、この世にいることを知ったこと。

 

それも「男×女」の関係ではなく、「男×男」の関係で、同じ同級生の中で僕に好意を持ってくれた人がいたこと。ゲイとしての生き方を大学時代から模索しくことになったけれど、あまり絶望的にならずに生きてこられたのは、高校時代に「男×男」の関係でも、僕に対して好意を持ってくれた人がいてくれたからだと思う。「これから先、ゲイとして生きていても、いつか自分を好きになってくれる人が目の前に現れる」という希望を持てたことは大きかった。

 

以前、1クラスに1人位の割合で、同性愛者がいると聞いたことがある。僕の小学生のクラスは40人中20人は男子だった。大人になって知ったんだけど、そのうち3人が同性愛者になっていた。1クラスに1人位の割合で同性愛者がいるという話も間違っていないと思う。

 

それに高校時代、休み時間中にエロ本(女性のヌードの方)を読んでいる同級生がいた。その同級生が僕にこっそりと打ち明けてくれたことがある。

 

「内緒なんだけどF君(男子生徒)のことは可愛いと思う。F君となら寝れると思うよ〜だから神原が男を好きなる感覚がわからなくてもないんだよね」

 

エロ本を見ながら言われても説得力がないが、同じような発言を別の同級生からも何度か聞いた。同性愛者として目覚めるかはわからないけど、同性愛者になる可能性を持っている人も意外と多くいるのではないかと思う。

 

もし中学生や高校生で、周囲に自分と同じ同性愛者がいないと悩んでいる人がいるのなら、僕みたいに開けっぴろげにカミングアウトしている生徒は少ないかもしれないけど、同性愛者の仲間は確実に身近にいるよと伝えたい。

 

<おわり>