大人の同性愛世界の入り口<1>

大学に入学して半年くらい経った。大学生になったボクは中学時代や高校時代と違い、周囲に同性愛者であることを隠していた。その影響からなのか大学時代になってから、好きな男性もいなくなり、かといって女性を好きになることもなく、恋愛感情を抱くことがなくなっていた。

「このまま同性愛者であることを隠して生きていて未来はあるのだろうか?」

漠然と不安を抱えながら大学時代を過ごしていた。

そんなある日、ゼミで一緒になった友達2人と晩飯を食べに行くことになった。1人はユウスケ君。もう1人はショウタ君。2人ともゼミの発表で同じメンバーになったことがきっかけで知り合った仲だった。

ボクらは待ち合わせの時間に大学近くの店に集合した。大学の近くということもあり、店内は学生だらけで、3人で騒ぎなら晩飯を食べていた。出された料理も食べ終わり雑談していると、途中からユウスケ君は冊子を出して真剣に読み始めた。その冊子は学校内で活動しているすべてのサークルがまとめられていた。冊子を見ならがユウスケ君が言った。

「そいうえば神原さんって、サークルに入ってるよね?」

「うん。入っているよ」

ボクは入学して早々に文化系のサークルに入っていた。冊子を見ていたユウスケ君はどのサークルの入るか悩んでいたようだ。

「数が多すぎて迷うんだよね。どのサークルに入ったらいいかな?」

ユウスケ君はボクに冊子を手渡してきた。自分の入るサークルくらい自分で決めればいいのに・・・心の中で思いつつ、真剣に探している振りをして冊子をめくっていた。

「本当にいろんなサークルがあるね。ボクは入学する前から入るサークルを決めてたから迷わなかったけどね」

最初から順にページをめくっていると最後の方に同好会がまとめて記載されていた。

「この冊子って同好会も記載されてるんだ・・・」

ボクの言葉にユウスケ君は反応した。

「そうそう!そういえば同好会って変な名前多くない?」

「落語研究部」や「将棋研究部」など堅そうな名前ではなく、ちょっとユニークな名前のついた同好会ばかりだった。ボクはユウスケ君の入るサークルを探すのを放棄して、面白い名前の同好会を探していた。上から順番に目で追いかけていると、途中で気になる同好会名があることに気づいた。「同性愛」や「ゲイ」と言った言葉が記載されている同好会がいくつかあったのだ。

「この同好会はどんな活動をしてるんだろう?」

活動日時や活動場所など詳しいことが一つも記載されていなかった。その同好会のことが気にはなったけど、友達に話しを振るわけにはいかなかった。変な名前の同好会が多いという言葉に反応したショウタ君がボクに言った。

「神原さん。俺にも冊子見せて!」

ボクは同好会のページが気になりつつも、ショウタ君に冊子を渡した。冊子を受け取ったショウタ君も変な名前の同好会を探していた。

「本当だ。同好会って変な名前ばかりあるね」

同好会名を上から順に眺めているショウタ君を見て、嫌な予感がしていた。そんなボクの予感は的中して大きな声を上げショウタ君は言った。

「見て!見て!同性愛とかゲイの同好会があるよ!」

<つづく>