大人の同性愛世界の入り口<3>

夜の遅い時間になり、ようやくボクらは店を出た。

「じゃあね。2人ともバイバイ!」

早く1人になり頭の整理をしたかったボクはすぐに2人と別れた。そして1人で夜道を歩きながら物思いに耽っていた。

「きっと同性愛者であることを隠して生きていくと、こういった場面に何度も出くわすことになるんだろうな・・・」

2人の言葉を聞いて怒りの感情は起きなかった。むしろ虚しさを感じていた。きっとボクも同性愛者に生まれていなかったら、彼らと同じような反応をしただろう。もし同好会に入れば同性愛者の仲間に会えるかもしれない。でも大学時代からはゲイであることを隠して生きていくと決めたのだから、あの同好会に入るわけにはいかない。同好会に対する迷いは捨て去ることにした。

まだ大学生になったばかりのボクは同性愛の世界について全く知らなかった。大学時代までに会った同性愛者は高校時代に会ったヒロト君だけだった。それ以外の同性愛者の世界との接点もなかった。

「今頃、ヒロト君は何をしてるんだろう?彼氏はできたのかな?それとも相変わらず同性愛者なのを隠して生きているのだろうか?」

やっぱり同性愛者であることを受け入れてくれる存在は、同じ同性愛者しかいない。自分勝手だけど、高校時代は無視していたヒロト君のことが今更になって気になりはじめていた。

そんなボクにはじめて大人の同性愛の世界を知る機会が訪れる。

ある日、ショウタ君からメールがきた。

「今日の夜って暇?大学近くの銭湯に行ってみない?前に行ってみたけど、サウナとか凄く気持ちがいいよ!」

<つづく>