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ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。現在は隠れゲイ@福岡。過去の思い出や現在のことを綴っていきます。

同性愛者として生きる決意<2>

第8章 同性愛者として生きる決意




同級生からN君にボクの気持ちを暴露された後、ボクはN君とは会わないように注意を払っていた。N君の高校の文化際に誘われたこともあったが行かないようにしていた。中学時代の同級生が集まる場も、N君がいないことをそれとなく確認してから顔を出すようにしていた。

大学生になったボクは、中学時代とは違いN君に対する憧れの感情は薄れていた。中学時代のボクは根暗で人と接することが苦手だったが、N君に憧れて少しづつ性格が変わっていき、人と接することが一般人並みにできるようになっていた。ただ・・・ここ1年間、恋愛感情を抱いていなかったボクは久しぶりにドキドキしていた。N君は笑顔で話しかけてくる。

「本買うの?」

N君はボクの手元の本を見て言った。

「うん。実家にいても暇だから時間つぶしに読んでる」

「そうそう・・・ここって何もないよね。ボクも暇だから本屋に来たんだ。ねえ!神原さんってどこの大学に行ってるの?」

話しながらN君が近づいてきた。話す時の距離の取り方が近いのも昔のままだった。

「関西の◯◯大学だよ。そっちはどこの大学?」

「おっ!近いね。ボクも関西で◯◯大学」

同じ関西の大学にいたのか・・・中学時代から勉強ができたN君は同じ関西でも飛び抜けてレベルの高い大学に入っていた。ボクらは30分近く立ったまま会話を続けていた。

「神原さんはいつ頃、大学に戻るの?」

「少し早いけど、来週には戻る予定だよ」

実家にいて暇を持て余していたボクは早く大学に戻ろうと考えていた。ボクの言葉を聞いたN君は残念そうに言った。

「そうか・・・ボクはもう少し実家にいる予定なんだよね。一緒に新幹線で帰れたらいいのに。乗る駅って◯◯駅からでしょ?」

「うん◯◯駅だよ。でも日程が合わないなら仕方がないね」

話しながらもボクはN君に謝りたかった。ホモのボクが好きになってしまって迷惑をかけてごめんね・・・と謝りたかった。N君は昔と同じように接してくれている。嫌な顔はおくびにも出さなかった。受け入れてくれる期待もしなかったし、ボクとすれ違っても露骨に無視されても仕方がないと思っていた。だからボクはN君との接触を避けていたのだ。

「じゃあ!また会おうね」

N君は気軽にボクの手を握ってきた。相変わらずだな・・・N君は中学時代からボクに抱きついてきたりしてスキンシップが激しかった。N君のスキンシップがどれだけボクを惑わしてきたんだろう・・・でも誰にでも気軽に接することのできるN君にボクは惹かれたのだ。当時を思い出しながらボクも笑顔でN君の手を握り返した。

「うん!またね」

N君は手を振って去っていった。N君は最後までボクが同性愛者であることに触れないでいてくれた。

N君と別れた帰りの電車の中で、周囲に見つからないようにボクは泣いていた。田舎を走る電車の中はガラガラでボクが泣いていることを気づいている人はいなかった。家に帰ったら親がいる。親の前で泣くわけにはいかない。

N君を好きになって拒絶されずにそっと受け入れてもらえた。その記憶だけでもボクは生きて行けると思った

「N君ありがとう。N君を好きになってよかった」

そして喜びの感情と同時に、悲しみの感情も抱いていた。

大学生になってから同性にも異性にも好きな人ができなかったけど、N君と再会して人を好きになる気持ちを久しぶりに持つことができた。それは親友の女友達であるカタハラさんにも抱けなかった感情だった。

「やっぱりボクは同性愛者なんだ・・・」

N君と再会して自分の正体を再認識した。認めたくなかったけど悲しくて涙が止まらなかった。恐らくボクは女性と結婚して子供を持つこともなく、普通の人生とは違う道を行くことになるだろう。同性愛者ある以上、恋愛関係ができるのは同じ同性愛者で、肉体的関係が持てるのも同じ同性愛者だけだ。恐れていた現実だった。

ずっと目を背けてきたけど本格的に同性愛者の世界に向き合うしかない。電車の中で、ボクはある決意をしていた。

<おわり>