春休みが終わり大学2年生になった。
「同性愛の世界と逃げずに向き合う」
実家から大学のある京都に戻ってきたボクはそう決意をしていた。そして同性愛と向き合うためにあるものを使うと決意していた。同性愛に関する本を読んでも、得るものがなかった時から考えていた。これを使えば同性愛について確実に情報が手に入るだろう・・・でも使うのが怖くて躊躇していたものがある。
それは「インターネット」だった。
ボクが大学生になった頃から、少しづつADSLが普及し始めてインターネットが手軽に使えるようになっていた。大学1年生の間は、インターネットをメールを書くために使用したり、ニュースサイトを見たりすることしか使用しておらず、いわゆる健全な使い方をしていた。しかし、健全な使い方をしていたある日、ふと思いついたことがある。
「インターネットで同性愛について調べればどうなるだろう・・・」
でも・・・一瞬頭をよぎったが、すぐに打ち消していた。きっと同性愛者なら「同性愛」や「ゲイ」という言葉を調べることに抵抗感を感じたことがあると思う。この言葉を調べると自分が同性愛者であることに否が応でも向き合うことになる。まだ当時のボクは同性愛について向き合う準備ができていなかったから、調べたみたいという好奇心を無意識に打ち消していた。しかし、N君と再会して同性愛者として生きるしかないことを思い知らされた。インターネットで同性愛について調べてみよう・・・そう決意して京都に戻ってきたのだ。
京都に戻って数日が経過した。ボクはパソコンの前に座っていたが、なかなか調べることができないでいた。
「インターネットを使えば、確実に同性愛者と出会うきっかけを作ることができる」
そういう期待があった。
「でも怖い・・・」
中学時代や高校時代に同級生に対して抱いていた恋愛とは違うステージに立つことになる。そう予感していた。恐らくそのステージに一度でも立つと深い入りして戻れなくなるのではないか・・・不安でいっぱいだった。銭湯で出会った同性愛者の人たちが頭をよぎっていた。ボクもあの常連客と同じようになってしまうのだろうか・・・
散々悩んだ末、ある日の夜に、ようやく決意して自宅のパソコンの前に座ることができた。気が重いままパソコンを起動して検索サイトを立ち上げた。検索サイトに恐る恐るキーワードを入力した。
「同性愛」
キーワードの打ち込みが終わってから、ボクは勇気を出して検索ボタンを押した。
<つづく>