その人は◯◯◯を弄っていたが、興奮してきたのか鼻息が荒くなってきた。ボクはなんだか痛々しくなりその人から目をそらした。あらかじめネットでハッテン場の体験談を見ていたから、銭湯の時ほど驚きはしなかった。ただ・・・どう対応したらいいのか困っていた。
「うわ〜どうしようかな。これは会話を楽しむ雰囲気ではないよな」
他の2人はベンチに座ったまま、ボクとタバコを吸っている人の様子を見ていた。そのうちタバコを吸ってる人は立ち上がって、トイレまで歩いて行った。そしてトイレの入り口で立ち止まり、ボクの方を向いて立ったまま◯◯◯を弄っていた。
「きっと・・・一緒にトイレに入ろうと誘っているんだろうな」
ボクは妙に冷めた気になってきた。同性愛者の仲間に会えたという喜びは微塵も起きなかった。ボクは下を向いて携帯でメールを打っているフリをしていた。
「あのサイトに書いていることは嘘はではないと確認できたし、目的は達成したのだからもう帰ろう」
ボクは立ち上がると、さっさと公園の入り口に向かって歩き出した。あの人のことが、少し可哀想な気もしていたが、やっぱり公共の場で不埒なことをする気は起きなかった。
「できれば気軽に同性愛について話す相手を見つけたかったな」
もう少し待っていたら同年代のまともな人が現れるかもしれない。そう思って少し後ろ髪を惹かれる気もしたが。ボクは振り向かないでまっすぐ公園から出て行った。ボクは帰り道に考えていた。
「銭湯にいた人たちや、公園にいた人たちみたいにはなりたくはないな」
同性愛の世界と隔絶して生きてきたけど、インターネットは劇的に同性愛の世界との距離を縮めてくれた。それがいいのかは分からないけど少なくとも同性愛者として生きていく選択肢は増やしてくれた。
「何も知らないよりは知っていた方がいいに決まっている。もう少し同性愛者の世界についてインターネットで色々と調べてみよう。そしてもっと色々と体験してから自分の生き方を決めていこう」
同性愛者としてどう生きていくか・・・ボクの模索がはじまっていた。
<おわり>