同性愛者の友達が欲しい<6>

 ボクは公園のトイレ前のベンチに戻って来た時点でなんとなく嫌な予感がしていた。ハッテン場に連れて来たってことはやっぱ肉体関係が目的かと疑っていた。メール相手の人はボクに話しかけて来た。

「君のこと何て呼んだらいい?」

「タカオミでいいですよ」

 ボクは実名を名乗っていた。

「こっちはイサムでいいよ。もしかしてタカオミって本名?」

「そうです・・・本名です」

「こっちは適当な名前だよ。そんなに素直に本名を言う人も珍しいよ」

 イサムさんは楽しそうに笑っていた。何か会話を続けなくちゃと思ったボクは質問事項を考えた。

「イサムさんはどんな仕事をしてるんですか?」

「大阪のゲイバーで働いてるの」

 ボクの予想は当たった。なるほどそれで女装してるのかと思ったけど口には出さないようにした。ボクは無難に会話を続けることにした。

「ゲイバーか・・・行ったことないですね」

「今から終電で大阪に行って仕事なんだけど、明日も暇なら一緒に来ない?」

 予想していなかったことを言われた。大学生だから1日くらい授業をサボっても問題はないけど急いで断った。

「いや・・・いきなりゲイバーに行く勇気がないです」

 今になって振り返ってみると、誘われるまま大阪のゲイバーに行ってみたら、もう少し違った人生になっていたのではないかと思う。ついさっきまで掲示板に書き込んで寝ようとしていたのに、相変わらず状況の変化について行けていなかった。イサムさんはボクの反応を見て笑いながら言った。

「タカオミ君ならうちに来てる客に結構モテると思うよ」

「そうなんですか・・・」

「タカオミ君は同年代より30歳以上の人から可愛がられそう。うちに来たら色々教えてあげるよ」

 イサムさんの同年代より年上にモテそうという言葉を聞いて、ボクはショックを受けていた。しかしこのイサムさんの発言はかなり当たっていて、後々に出会う多くの同性愛者から同じ言葉を聞くことになる。色々教えてあげる内容が気になったが深く追求せずに流すことにした。なんとなく怪しい雰囲気になって来たので、ボクは別の話題を振った。

「あの掲示板サイトを見てよくメールを送ったりしてるんですか?」

「いいや・・・あの掲示板って投稿している人って嘘ばかっかり書いてるから。今から仕事なんだけど、たまたまタカオミ君の書き込みを見つけて、この子に会いたいなって思ったの」

「書き込みのどんなところがですか?」

「読んでてすごく真面目そうな感じがしたから。この子の書き込みは嘘じゃないって思ったの」

 ボクは反応に困ってしまい少し間ができた。イサムさんは少し近づいてボクに言った。

「終電まで1時間少し時間があるけどどうする?どっかでる?」

<つづく>