同性愛者としての初体験<8>

「まだ有料ハッテン場に行く勇気はないよ」

 ボクは誘いを断った。

「それにボクなんか行っても相手にしてくれる人がいるかな?容姿とか全く自信がないけど」

「俺だって相手ができたくらいだし、若ければ誰かしら相手はできるよ」

「そんなものかな・・・でもやっぱり怖いな。全く知らない人と肉体的な関係を持つのは抵抗があるんだけど」

 少し間があってヒロト君が言った。

「じゃあ・・・俺とならどう?」

「えっ?」と自分の耳を疑った。まさかヒロト君から誘われるなんて思っていなかった。

「俺じゃあ駄目?」

 ボクは返答できずに黙っていた。ボクはヒロト君に恋愛感情は抱いていなかった。有料ハッテン場に行ってて面食らった点もあるけど、でも高校時代からヒロト君の真面目な性格は知っている。無理なことはしないという信頼感があった。頭の中では「ヒロト君ならいいかもしれない」と少し思ったが、どこまで本気で言っているのかも疑わしかった。

「いきなり過激なことはするつもりはないよ。神原さんの許す範囲でいいけど?」

「仮にヒロト君とするとしてもサポーターはちょっと嫌だな・・・」

 曖昧な言葉で濁しながら答えた。

「じゃあ俺の家でする?」

「う〜ん」

「それなら神原さんの家でもいいよ」

 高校時代のボクならすぐに断っていたと思うけど、大人の同性愛の世界について知って行くうちに、同性愛者として生きづらさを感じ始めていた。いくらノンケの人に恋心を抱いても先がないことも理解するようになったいた。ボク自身が同性愛者なのに同性同士で肉体関係を持っていいものなのかという迷いもあったが、いつかは超えないといけない壁だった。「知らない人よりヒロト君となる安心して肉体関係が持てる」と思った。

「本当にボクが相手でもいいの?」

「俺も全く知らない人とするより神原さんの方がいい」

 その言葉を聞いてボクは決心した。

「じゃあ・・・ボクの家でする?」

<つづく>