「ねぇ・・・本でも読む?」
話す内容が思いつかなかったボクは棚から二冊の本を渡した。少し前に本屋で買った同性愛をテーマにした本だ。ノンケの友人には読ませることはできないがヒロト君は別だ。ボクらは床に座った。ヒロト君は受け取った本のページをペラペラめくりながら言った。
「俺も本屋でこの手の本を読んだことがあるけど、小難しいことばかり書いてるよね」
「同感」
やっぱり現実的な内容じゃないよなとボクも思っていた。恥ずかしいのかボクの顔を見ないで本を読みながら言った。
「神原さんってタチとウケとリバどっち?」
「よくわからないけどウケじゃないかな?」
読んでいた本を棚にボクに返しながら言った。
「俺自身もウケの方だと思う」
ゲイ用語で「タチ」はセッ○スで「攻め役」を意味する。「ウケ」は「受け役」を意味する。リバは「タチ」と「ウケ」のどちらも役もこなせる人のことを意味している。後々、肉体関係を重ねていくうちに気づいたのが、ボクはずっと自分のことをウケだと思っていたが、リバだったことに気づいた。相手がタチの人ならウケ役になったし、相手がウケの人ならタチ役になった。気まづく向き合いながらボクは困惑しながら言った。
「え〜と、これからどうしようか?」
ヒロト君は照れながらボクの手を握ってきた。
「同級生同士で・・・変な感じだね」
そう言いながら、ボクも照れながら手を握り返した。お互いそれからどう進めていいのか困っていた。ボクはヒロト君の側まで移動して隣に座った。そしてお互い抱き合った。抱き合いながら、「ヒロト君がウケ役ならボクはタチ役になるしかない」と冷静に考えていた。
<つづく>