職場でゲイとして生きること<3>

 入社してから三日間の研修合宿があり、さらに会社内の一室に新人達が篭って一ヶ月くらいの研修があった。社会人のマナー講習やプログラムングやデータベースの講習を受けていた。そして研修日の最後に配属先が発表された。パッケージソフトを開発する部署に配属された新人はボクを含めて三人だった。ボクら同期三人は気が合い仲が良かった。

 ボクは特に同期の村上君と仲が良かったけど、彼とは研修合宿でも一緒のチームになったりして作業や発表をしていたが、彼がいたという記憶がほとんどなかった。実際に配属先が決まって職場で働くようになってから、「こんな人いたっけ?」と彼の存在を初めて認識したのだから酷い話である。彼はIT系の専門学校卒業で、プログラミングのスキルも高く、仕事も真面目にそつなくこなしていた。仕事帰りに二人で食事をしたり、飲んだりしていた。

 ボクは直ぐに仕事が好きになり、同性愛者としての活動は全くしなくなっていた。大学時代に通っていた有料ハッテン場通いも鳴りを潜めて仕事に没頭していた。

 システム会社は、実際には自社で働いている人も多くいるけど、それ以外にも派遣先で働いている人も多くいる。ボクは自社パッケージソフトを扱って部署にいるので、派遣先に出されることはなかったけれど、客先の導入作業などで出張や外出して自社にいないことが多くあった。特に派遣先で仕事をする社員たちの会社への帰属意識は希薄になっていた。

 社員の結束を固めるために、ボクの会社が取った行動は頻繁に飲み会を開催するという選択だった。社内的なイベントとして頻繁に飲み会を開催するだけでなく、さらに上司から仕事帰りに「飲みに行こうぜ!」という誘いも頻繁にあった。

 そう……ボクはいくつかの理由があって会社の行事の飲み会が嫌だった。この飲み会嫌いが原因となって、ある問題が起きるのだ。

<つづく>