職場でゲイとして生きること<4>

 少し本筋からズレてしまうけど話を続けたい(この章は本筋からズレるのが、これで二回目だけど)。

 これはボクがゲイであることと何の関係もない話だけど、ボクは割と人の話を真剣に聞いてしまうタイプの人間のようだ。有料ハッテン場で会った人と雑談して、一年後、久しぶりに同じ人に会った時も、一年前に聞いたことを、しっかり覚えていて相手の人がヒイてしまう時がよくある。まぁ……その記憶力のおかげで、このサイトの文章が書けているのだけれど。

 それは飲み会でも同じだった。

 同じメンバーで飲んでいれば、そのうち話す内容も尽きてくる。ボクは一度聞いた話は、真面目に全て聞いて覚えてしまうので、、週に何度も飲み会が続くと、同じ話を聞くのにもいい加減に飽きてしまっていた。もう一人の同期の山田君は、飲み会の雰囲気を盛り上げるのに長けたキャラで、同じ話を飽きもせずに目を輝かせて、テンションも高く相槌を打ちながら聞いていた。ボクは「よくやるよな」と、彼を横目で見ながら焼酎の水割りを作り係に徹していた。

 ある日、飲み会の帰り道、山田君に思い切って訊いてみた。

「ねぇ……前から不思議だったんだけど、よく毎回、同じ話を初めて聞いた風に聞けるよね? ●●さんが言ってた●●●の話ってもう何回も聞いて飽きてこない?」

 ボクの指摘に対して不思議そうに山田君は答えた。
 
「えっ? あの話って前に聞いたことあったけ?」

 ボクは呆れ果てながら言った。

「もう……同じ話を五回以上は聞いてるけど。毎回、●●さんって飲み会になると同じ話をしてるよ」

「いや〜俺って相手の話とか全く聞いてないんだよね。もうその場のノリで適当に相槌だけ打ってるから」

 なるほど道理で毎回、ノリノリで同じ話を初めて聞いたかのように目を輝かせて聞ける訳だ。確かにそれも飲み会とうまく付き合う一つの手段だなと思った。でもボクにはとてもできないと思った。ボクは大人数で広く浅く飲むより、少人数の好きな同期や先輩と深くじっくりと話をしながら飲むのが好きだった。それに同じメンバーで飲むより新しいメンバーと飲むほうが好きだった。

 でもこの程度の問題は社会人なので、仕事と割り切って付き合うことができた。

 ボクが飲み会で一番めんどくさかったのが二次会だった。そうキャバラクラ遊びだ。 

<つづく>