住吉奇譚集<6>

 奥に向かって足を踏み出したボクの目の前には、いきなり二階に上がる階段があった。

 まずは一階の様子を見てから二階に上がろうかな?

 そう思って、右に曲がりまっすぐに伸びている廊下を歩いた。廊下の左手には三つほど部屋があった。

 一つ目の部屋は、テレビと腰掛け椅子が置いてあった。部屋にはタバコの煙が充満していた。どうやら喫煙スペースのようだった。それに部屋の壁にはスマホの充電ができるようにコンセントが沢山あった。部屋の中には二十代の男性が二人いて、テレビを見ながらタバコを吸っていた。

 二つ目の部屋は、デスクトップパソコンが二台ほどあった。パソコンのOSが未だにWindowsXPなのが気になったけど、どうせみんなスマートフォンでネットをするだろし、使う人はいないだろうと思った。その部屋の中にも二十代の男性が一人いた。

 三つ目の部屋は、テレビの目の前には三人ぐらいが寝っ転がれそうな大きさのソファがあり、ソファの上には毛布が置いてあった。本棚があり漫画本が沢山置いてあった。二十代の男性が二人いて、ソファに寝転がってテレビを見ていた。

 一階は発展スペースというよりは休憩所のようなところだった。
 
 何かいつもと違う雰囲気の店だな。

 何か不思議な思いがしつつ一階の巡回が終わった。
 
 次は二階に上がってみた。二階は人の顔の判別はできるけど一階に比べると薄暗く感じた。でも他の有料ハッテン場に比べれば全体的に部屋は明るく感じた。部屋は迷路のようになっていて、初めて来る人にはかなり分かりにくかった。ボクは何度も同じ道を回って、全体的な部屋の間取りを覚えようとした。部屋は大体で二十個ぐらいあって、少し大きめの部屋、小さめの部屋、鍵のかかる部屋もあったりした。二階を徘徊していると、二十代の男性五人とすれ違った。

 ボクは人に顔を合わせる度に、いつもと違う違和感を感じていた。

 やっぱり……この店っていつもと何かが違う気がする・・・

 部屋の中を覗くと三十代の男性が二人ほど寝ている姿を発見した。

 ボクはその姿を見て、ほっと安心している自分に気がついた。

 ちょっと待ってよ! さっきから全部で十二人ぐらいの客とすれ違ったけど、え〜と。内訳は二十代が十人で、三十代は二人ってところかな……

 この人数の内訳から推測するともしかして……この店って若者向けの店なのかな?

 ボクはかなり嫌な予感がしてきた。

<つづく>