住吉奇譚集<7>

 通常の有料ハッテン場の人口構成を考えると、三十代から四十代前半にかけてが一番多いように感じていた。ボクは人口構成の一番多い三十代中盤だった。もちろん東京などの大規模な有料ハッテン場になると、もっと人口構成は変わってくるけど、福岡の有料ハッテン場なら大体それぐらいの構成だった。だから今までこんな違和感を感じたことがなかった。でも今日訪れたこの店は、明らかに二十代ばかりいた。

 うわ……店の選択を間違ったかな。

 ボクを除いた二人の三十代の男性は歩き回ることもなく個室に篭っていた。この有料ハッテン場の店内が、他の店よりも照明を明るくしているのにも納得できた。若い人をターゲットにしているから、照明を暗くして顔や体を見えないようにする必要がないのだろう。

 二十代の男性たちは、好みの相手がいなかったのか、ボクを含めた三十代の三名を残してみんな一階に降りてしまった。きっとタバコを吸ったり、テレビを見ているのだろう。残された三十代の男性たちは、個室の中で大の字になったり、仰向けになって寝ていた。

 きっと誰かが誘ってくれるまで待ってるんだろうな。

 彼らの姿を見ていると、なんだか悲しくなってきた。時々、誰かが二階に上がってくる足音が聞こえて、二十代の男性がボクの目の前を通り過ぎていった。そして部屋を覗いて回っていた。三十代の男性たちがいる個室を覗いても、全く興味がなさそうに通り過ぎていった。彼らの歩く姿は自信に満ちていた。

 ボクも、少し前まではあんな感じだったんだろうな。

 そんなことを考えながらボクは腕組みをして壁に寄りかかっていた。ボクは二階の中央にある短い廊下に立っていた。各部屋から伸びている道の全てがこの中央の廊下につながっているようだ。壁には張り紙があって。『この廊下に立って好みの男性を誘おう』といったことが書かれていた。きっと好みの男性がいれば誘いをかけて、お互いに惹かれていることが分かったら二人で廊下を歩いて空いている個室に移動するための間取りなのだろう。

 その中央廊下の壁には一枚の鏡が架けられていた。

 ボクは鏡に映った自分の姿をまじまじと見ていた。

<つづく>