住吉奇譚集<9>

 一番活発に活動していた大学時代にも一晩で有料ハッテン場をはしごしたことはなかったけど、いつの間にか、ボクの中ではワクワクした気持ちで一杯になっていた。

 一階のロッカールームに行って、スマホを取り出してきて、誰もいないパソコン部屋の椅子に座って二軒目の店を探していた。

 時刻は既に0時を過ぎていた。

 大抵は二十三時くらいには寝てしまうので、眠たくてしょうがなかった。思い眼で呼び込み掲示板を見ていると、ある有料ハッテン場のサイトで三十代前半の人が呼び込みの書き込みをしているのをみつけけた。その店の地図を見ると、今いる店から近かった。 

 結局、この店に二時間近くいたけど、関係を持っておる人達は一組くらいしかいなかった。普通の有料ハッテン場なら、十人以上もいれば、三組か四組は関係ができてる人数だった。

 店を出ることに決めて、ロッカーのドアを開けてバタバタと物音を立てていると、新しい客が来たかと思って、奥から何人かが顔を出して来た。さっきまで店内にいたボクだと分かると落胆して引き返していった。

 まだ店に来てから二時間しか経っていない。誰も相手にされないから帰るのかと思われると少し恥ずかしかった。

 ボクは年下にモテることはあまりなくて、同年代か年上の人にはモテるタイプなのだ。ボク自身も同年代か少し年上の人の方が好きだ。ボクは人に甘えたり、甘えられたりするのが嫌なのだ。あくまで相手とは対等な関係でいたかった。

 急いで服を着替えて、受付にタオルとロッカーキーを渡して店を出ると、深夜0時半を過ぎていた。

 ひょうたん池から住吉通りに出て道路を渡って、今度は美野島に向かって歩き出した。美野島辺りもゲイ関連の店が多い地域になる。もちろん次に行く店も行ったことはなかった。住吉通りを歩いていると、学生達やサラリーマン達が、酔っ払って騒ぎながら歩いていた。ボクは彼らの脇を通り抜けて、美野島に向かった。

 もう少し店のホームページや掲示板の書き込みを確認してから、店を選べばよかったかもしれない。ボクは一晩で二回も店の選択を後悔することになる。いや……インパクトで言えば二軒目の方がはるかに超えていた。

<つづく>