住吉奇譚集<12>

 真っ暗な闇の中を手探りで、三階までたどり着いた。

 店内にいる合計人数は約十五人で、三十代はボクをいれて二人。四十代が一人。残りは軽く五十代は超えているメンバーばかりで最年長は七十歳は超えていた。

 その店は三階建ての建物だ。

 年配の客には階段を登るのがキツイようで、「よいっしょ」という掛け声を上げながら一段一段、慎重に登っている人が多かった。階段の途中には、何故だかティッシュが何枚か落ちていた。後々に目撃するのだが、バックをした年配の客が、ティッシュでお尻を拭いて、そのまま尻尾のようにくっついたまま途中で剥がれ落ちる物だった。ティッシュは階段だけでなく、廊下の途中にも落ちていた。ボクはその現場を目撃した時、思わず目を背けてしまった。そして肉体関係がやたら過激だった。さっきの店の初々しく思えるくらいだった。一人の男性を、激しい声を出しながら四人がかりでバックで回していた。

 ボクはドン引きしながらも、壁にもたれかかって、その人達の様子を見ていた。

 みんなボクよりも遥かに年上の人達だった。意図して来たわけではないけれど、こんな年配の人向けの有料ハッテン場があるなんて知らなかった。三十代はボクともう一人だけである。こんな状況になってくると、さっきの店では相手にされなかったけど、全く逆に立場になってしまう。ボクはすれ違う人たちから、悉く狙われる羽目になっていた。

 もう一人の三十代の男性は、六十代後半くらいの男性と仲良くベッドで寝ていた。どうやらその年配の男性にゾッコンのようで、子供のように甘えていた。二人の会話を聞いていると、もともと老け専のようだった。そもそもボクがこの店に入るきっかけになった書き込みも、きっと、この三十代の男性が書き込みがきっかけになったのだ。

 親父さん大好き。何時くらいが多いのかな? ムラムラする親父さんいないかな? 168ー58ー32

 掲示板に書き込まれたプロフィールと、実際の外見から間違いなく彼にぴったりだった。よくよく彼の書き込みを見ると、この店が年配の客が多いことをなんとなる予感することもできないこともない。この三十代の男性の顔を休憩室で見た時は驚いた。テレビを見ながら他の客と無邪気に話していたのだが、まるで父親と息子のようだった。そしてかなりハンサムだった。男性にも女性にも、かなりモテると思われたけど、年配にしか興味がないようで、ひたすら年配の客に話しかけていた。

 世の中……色々な人がいるな。

 ボクはしゃがんで壁にもたれて、年配の男性達が過激に回しているのを、眺めながら物思いに耽けっていた。

<つづく>