ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。現在は隠れゲイ@福岡。過去の思い出や現在のことを綴っていきます。

住吉奇譚集<16>

 ボクは彼がシャワーを浴び終えるまでの間、二階や三階を行ったり来たりすることにした。どの敷布団にもベッドにも誰かしらが寝ていた。

 既に深夜三時を過ぎて四時になろうとしていた。みんなぐっすりと眠っていた。歩きながら周囲の音に耳を澄ませていると、あちこちでイビキが鳴っていた。それもかなり激しいイビキばかりだった。年配の人が多いせいか、他の有料ハッテン場では聞けないくらいの大きなイビキばかりだった。そしてあちこちでオナラの音がしていた。恐らく寝てる間に自然に鳴ったオナラで、本人も覚えていないだろう。ボクは面白くて真っ暗な廊下でクスクスとお腹を抱えて笑っていた。なんだか年配の人たちに親近感が湧いていた。

 二階のベッドを通り過ぎた時、小さな話し声がした。ボク以外にもう一人いた三十代の男性と、年配の人の話し声だった。ボクは真っ暗な廊下に立って壁に持たれかかったまま、二人の会話を聞いていた。

「職場とかでこっちの趣味のこと話してるの?」

「いや……隠してますよ」

「女性にモテるでしょ? 告白とかされない?」

「されるんですけど迷惑っす。この前も飲み会の後で、二人で飲みたいって誘われたんですけど、そしたら付き合いたいって言われて困ったんですよ」

「それからどうしたの?」

「俺と付き合っても、いいことないよって言いました」

「こっちの方しか興味が持てないんだ?」

「そうなんですよ。こっちの方でおじさんしか好きになれないですよ。会社でも女性より、部長とか常務の年配の人に恋してしまうんですよ」

「可愛いな〜」

 彼はゲイぽい仕草や話し方もしていなかったし、見た目もさっぱりしていて、どう見てもモテそうだった。職場の女性たちも、ゲイとは思わないで付き合いを申し込むだろうなと思いながら二人の話を聞いていた。二人はずっとお互いの体を責め合いながら会話していた。

 ボクは三階に上って、さっきまで彼と寝ていたベッドに戻った。空いているベッドはそこしかなかった。両隣にベッドがあったけど、爆睡しているのか二人とも激しくいびきをかいて寝ていた。うるさいくらいに大きないびきだったので、ボクは眠れずにベッドに横になってスマホでネットニュースを見ていた。

「ぐぅ~~~ぐぅ~~~ぐっ!ごぉぉぉ。げっほ!げほっ!」

 突然、隣の寝ていた年配の男性が息が詰まったように爆音とともに咳き込んで起き上がった。起き上がった後も、苦しそうに「はぁはぁ……」と息をしていた。無呼吸症候群にでもなったのだろうかと思って、心配になって小さく声をかけた。

「大丈夫ですか?」

「はぁはぁ……部屋が暑い!」

 彼はそうぼやきながら、ベッドに腰掛けたまま部屋の窓を開けた。 

<つづく>