ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。現在は隠れゲイ@福岡。過去の思い出や現在のことを綴っていきます。

カミングアウトの代償<18>

 後になって後悔しても遅いのだが、彼らの様子がおかしいとおもった時点で、近くことを止めておけばよかった。ボクは不審に思いながらも彼らに近づこうと歩きだした時だった。

「ホモ! キモい!」

「死ね! こっち来るな!」 

 二人は一緒になって、ボクにこれ以上近づくなという感じで罵声を浴びせてきた。「これはまずい」と思ったボクは頭を下げて彼らの顔を見ないようにして、逃げるように小走りに踏切を渡った。そして一度も振り返ることもなく、急いで家に帰って、何もないかのように母親の前で振舞っていた。その時はあまりの事態にあっけに取られて、何の感情も湧いてこなかった。

 でも時が経つにつれて、この出来事は徐々にボクの中で傷口を広げていった。

 言葉は人を救いもするけど、傷つけもする。そしてボクは今でも彼らの視線を覚えている。とても冷たくて嫌悪感がむき出しだった。あえて言葉にしないものはより鋭利に人を傷つける。

 ボクは大人になった今でも、夜に独りで布団に入って考え事をしていると彼らの言葉や視線を思い出して、胸が苦しくなる時がある。でもボクには彼らを責めることはできなかった。ボクもゲイに目覚めていなかったら、ゲイの人に対して同じようなことをしないとはいえないからだ。

 そもそも悪いのは何の決意もなく不用意にカミングアウトしていたボクの方だ。そう思っていた。中学時代のボクはカミングアウトをしたら、周囲からどう思われるかなんて全く考えもしなかった。他人の悪意に対して全くの不用意だった。

 小学時代の友達にまで、ボクが同性愛者だという噂は広がっていたが、それは前から知っていることだった。でも彼らの間には、ボクの噂はどう広がっているのだろうと思った。まるでバケモノか妖怪か何かのように思われているのだろうか。彼らは小学時代に毎日一緒に遊んで、卒業式の日も一緒に写真を撮った仲だった。それから全く彼らとは会っていなかったのだ。
 
 ボクはこの出来事からある決意をした。

<つづく>