ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています。毎日更新中@福岡

住吉奇譚集<17>

  年配の男性は窓を開けて「暑い暑い!」とぼやいていた。ボクはベッドから起き上がって、窓の方に歩いた。彼はベッドに座ったまま、身を乗り出して窓から顔を突き出していた。ボクも一緒になって窓から顔を出した。三階の窓から住吉の夜の街並みが少しだけ見えた。部屋にはベッドが三つ並んだあったけど、ボクが寝転がっていた真ん中のベッドには寒いくらいにエアコンの風が当たっていたのに、彼が寝ていた部屋の隅のベッドにはエアコンの風が全く当たっていなかったようだ。

「そろそろ夜が明けますね」

 夜空の向こうを見ると、少しだけ空が明るくなっていた。

「今何時くらいやろ?」

「もうそろそろ四時半になりますよ」

 その年配の男性は、ボクの方を興味深々といった顔で見ていた。そしてベッドに座ったまま、片足を伸ばして、下着越しにボクの股間を突いてきた。ボクが微かに笑っていると見込みがないと思ったようで、窓の外に目を移した。年齢は七十歳くらいだった。足で股間を突かれたのは初めての経験でおかしくて笑ってしまった。

「結婚されたりしたんですか?」

 ボクは興味があったことを思い切って聞いてみた。この店に来て初めて話した年配の男性だった。

「あぁ……結婚してあんたより年上の子供がいるし、孫もおるよ」

「そうなんですね。よくこの店に来るんですか?」

「あぁ……毎月一回は来るよ。嫁も子供も俺がこっちの方なのは気づいてないから」

「毎月……この店に来たら、不審に思われませんか?」

「友達と朝まで飲んでることにしとる」

「なるほど」

 それでも毎月朝帰りしてたら家族も不審に思うだろうとけど、指摘はしないようにした。

「あんたは結婚してるの?」

「結婚してないですよ」

「偽装でもいいから早く結婚しろって。悲惨なことになるぞ」

 予想外に説教がはじまってしまった。

<つづく>