時の流れは無情なもので、あっという間に夕方になって、ボクらは集合場所になっている京都駅の近くの旅館に集まった。そして夕飯を食べて、いよいよ各グループごとの出し物を催す時間になった。
他のグループは、音楽に合わせて踊ったり、クイズを出したり色々と考えた出し物をしていた。どのグループも、なかなかレベルが高くて真剣にやっているのが分かった。そろそろボクのグループの順番が来るので準備をするためにステージ裏に移動した。女装するメンバーは先に来ていて準備を進めていた。恐らく女装するメンバーが一番真剣に取り組んでいただろう。
「見て見て。俺の足スベスベだよ。この日のために足の毛を剃って来たんだ」
自分の足を触ってツルツルになっているのに感動しているメンバーがいた。
「俺も剃って来たよ。毛って剃ると濃くなったりするのかな?」
「さぁ……そういった話は聞いたことがあるけど、どうなんだろうね?」
みんなお互いの足を見せ合いしたり触り合いしていた。それに、紙袋の中から、どこから手に入れて来たのか分からないけど、コスプレ用のエプロンとかセーラー服を持ってきていた。親から借りて来た化粧道具も持参しているメンバーもいた。準備が進むにつれてバケモノのような格好に変身していった。
こんな化け物から、何でまた口説かれなきゃいけないんだろう?
ボクは女装子と言ったものには、全く興味がなくてどちらかというと普通の格好の男性が好きだ。女装している人とは全く受け付けなかった。
やっぱりボクは女装している人は無理だな。まぁ……どうせ女装している人に会う機会なんてないだろうけど。
ボクは同級生を見ながらそう思った。でも皮肉な運命だけど、大学二年生になってから、出会い系サイトを経由して京都市内の公園で女装子と出会うことになるのだ。
ボクとK君だけは、何の準備もいらないので、部屋の隅で手持ちぶたさで立っていた。
<つづく>