深夜のカミングアウト<6>

 話は元に戻る。

 ボクは村上君の真面目で几帳面すぎて性格的にもキツイくて、うまく周囲と溶け込めなくて抗っている姿がたまらなく愛おしく思えていた。

 ストレートに言うと、彼は「めんどくさい性格」なのだ。

 その「めんどくさい性格」が、人間臭くてボクにとっては魅力的なのだ。人から見れば欠点なのかもしれないけど、ボクに取ってはそこが惹かれる点なのだ。ただ彼に対して恋愛感情を抱いてから、すぐにそんなに冷静に分析ができていたわけではない。彼を好きになった理由が自分の中ではっきりと分かったのは数年後だった。それまでの間は、ずっと理由も分からなくて、ただ彼のことが好きだった。

 出張から帰ったらまっさきに彼と飲みに行きたいな。

ボクはホテルのベッドに横になったまま彼にメールを打った。

 出張から戻ったら飲みに行かない?

 今までも友達として普通に飲みに誘ったりしていたのに、この日からボクにとってはもっと別の意味を持つ誘いになってしまった。

 おぉーいいですよ。こっちには○日に戻るよね? 店を探して予約しておくね。

 ボクが豹変していることに、何も気がついていない彼は無邪気に返信してきた。二人で飲むだけなのに、きちんと店を予約してから飲みに行かないと気が済まないのも彼の几帳面な性格だった。ボクなんか適当に店に入って空いてなければ、別の店に行けばいいくらいの感覚なのだ。

 出張から戻ったら、そのまま会社に顔を出すから夜に飲もうね。

 ボクはニヤニヤしながら携帯の画面を見ながらメールの送信ボタンを押した。いつのまにかボクにとっては日常会話のメールすら貴重になっていた。彼とのやりとりで携帯の容量が一杯になってしまって、古いメールを削除していたけど、彼とやり取りしたメールを削除することすらもったいなく思えて、メールを削除するのではなく機種変更して、しばらく古い携帯を大切に保管していた。転職に伴う引越しで携帯の電源コードを誤って捨ててしまって泣く泣く手放すことになるのだけど。

 

<つづく>