深夜のカミングアウト<7>

 ボクはベッドに寝転がったまま携帯に保管している写真を見ていた。ボクは写真を撮るのも撮られるのも嫌いだけど、それでも何枚かの写真を保管されていた。その中には飲み会や社員旅行の写真があって、村上君が映った写真が何枚かあった。写真に映った彼の姿を見ていると、重大な事実に気がついた。

 もしかして……村上君って結構、ボクの好きなタイプなのかもしれない。

 身長は173センチくらい。痩せ型の体型。髪は普通の長さ。肌の色は白い。カッコいいとカワイイの中間のような顔立ち。ついでにどこから見ても真面目な優等生という感じ。なんというか……写真を見れば見るほどモロにボクの好みだった。なんで今までこんなに身近にいて、その重大な事実に気がつかなかったんだろうと不思議に思った。高校時代から同性も異性も好きになっていなかったので、恋愛感覚が鈍っていたとしか思えない。いつのまにか恋愛自体にめんどくさいと思うようになって、どうせ有料ハッテン場でしか、肉体関係を交わせる相手は見つからないと諦めていたからかもしれない。

 私服の姿もカワイイけど、やっぱりスーツ姿の方が真面目な感じが際立ってカッコいいな。もっと……多く写真を撮っておけばよかった。

 今更ながら写真に対して執着心がないことに後悔していた。今までは見向きもしなかった写真なのに、その日を境に全く違った視線……つまり恋愛感情を持った目で彼の姿を眺めていた。

 写真を眺めている間にも、ずっと村上君とのメールのやり取りは続いていた。ボクはただメールのやり取りをできるだけで嬉しくてしょうがなかった。今まで好きになった同性とは教室や道端で雑談をすることはあっても、メールのような完全に二人だけの閉ざされた世界で会話したことなんてなかった。それだけでもボクには嬉しくてしょうがなかった。

 ただ彼に会いたくてしょうがなかった。

   結局、その日は深夜遅くまでベッドの上で独りで呻吟していた。

<つづく>