ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

住吉奇譚集<18>

「でも無理に女性と結婚しても、うまく生活を続けられるかどうか……女性に対して愛情が持てないんですよ。だから相手の女性に悪いです」
「そう深く考えるな。適当な女性を見つけて結婚しとけ!」

 ボクは年配の男性と向き合って会話していた。ボクはバスローブを羽織っているけど、相手は全裸だった。なんで全裸の年配の男性と、朝方にこんな会話をしてるんだろうと考えると不思議な感じがした。

「そうでしょか……」
「あんた……さっきから愛情って言ってるけど、そこらへんの夫婦を見てみなよ。五十歳過ぎた男女の夫婦を見て愛情なんてあるように見えるか? 夫婦の関係に愛情なんて重要じゃない。性欲なんか、こういった店で発散すればいい」

 妙に説得力があるようなないような……ボクは完全に押されていた。ボクは自分の両親を思い浮かべた。確かお見合いで強制的に結婚させられたらしく、お互いに恋愛感情を抱いていなかったと聞かされたことがある。それでも夫婦としては喧嘩もすることなくうまくいっているようだ。

「確かにそうかもしれないです……」
「悪いことは言わんから早く結婚した方がいい!」

 自分の話したいこと話し終わると、年配の男性はベッドにいきなり横になった。そして十秒もすると、激しいイビキをかきはじめた。

 えっ……もう寝入ったの?

 ボクは呆気に取られながら、開けたままになっている窓から外を見ていた。ボクの側で年配の男性はさらに激しいイビキをかきはじめた。ボクは可笑しくて笑いが止まらなくなった。そして笑いながら空を見ていた。たった数分の会話なのに、既に空は明け始めようとしていた。

 そろそろ帰ろうかな……

 ボクは一階に降りることにした。部屋を横切って階段を降りていると、相変わらず、あちこちから激しいイビキが聞こえた。一階に降りると、受付のカーテンが閉まっていて、店員は姿を消していた。

 もしかして……この建物って、朝方になると管理する店員が誰もいない状態になるのか
もし店内で困ったことが起きたらどこに連絡すればいいんだろう。

 少しだけこの店に対して不審になった。シャワーを浴びて服を着替えた。休憩室にあるテレビでは天気予報が流れていて、福岡は一日中「晴れ」だった。ボクは受付の返却ボックスに鍵を入れてから店を出た。

<つづく>