ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

映画『ベニスに死す』の感想

ベニスに死す [DVD]

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 トーマス・マンの有名な文学的な作品なので、同性愛コンテンツとして紹介するのも気がひけるけど、内容的に同性愛要素を多分に含む映画だ。端的に説明すると、作曲家の主人公が休養を兼ねた旅行先で美少年と出会って恋に陥る話だ。ちなみに最後のシーンで主人公が死んでしまうけど、ベニスの街に流行した疫病のコレラに感染したからだ。

 この映画を初めて観たのは大学生の頃だった。若い頃に見るのと、自分が年を取ってから観るのとでは印象が全く違う。この映画を若い頃に見たときは何がいいのか全くわからなかった。ただ……自分に起こったある出来事が影響してこの映画を見直そうと思った。

 恥ずかしい話だけれど……最近、このサイトで二十代のプールの監視員を見てドキドキしている話を書いている。ボクは年下の人には恋愛感情を抱かないけれど彼を見ていて『若さ』って素晴らしいなと思っていた。そんなことを考えていると、忘れ去っていたこの映画のことをふと思い出した。この映画の主人公のことが頭の中から離れなくなって、すぐに見たいという気持ちが沸き起こってきた。この映画の主人公がやっていることとボクはほとんど同じことをしていた。そう……気がついたからだ。この映画を二十代の頃に見たボクは主人公のことを鼻で笑っていた。でも年を取ったから見たボクには笑うことができなかった。この映画の主人公が、美少年を意識して気を惹くために必死に化粧して若作りをしている姿が自分とかぶさって見えた。ボクはその主人公を若い頃に見たときにように滑稽だと思えなくなっていた。

 この映画の主人公が美少年をジロジロと見ている姿は、ボクと同じようなものだった。

 そして……ようやくこの映画のすごさが理解できるようになってきた。それはボクが年を取って若さを失った証拠だ。
 
 この映画に出てくる美少年も、ボクがドキドキして見ている若いプールの監視員も数年もすれば若さを失ってしまうだろう。それは年を取って身を持って痛感している人にはわかるけどあっという間だ。あっという間に喪失してしまうと分かっているからこそ、はなかくて美しいと余計に感じてしまうのだろう。

 今になって振り返ると、この映画を若い頃に見てよかったと思う。映画にしても小説にしても、若い頃に見たり読んだりしても何がいいのかわからないもの多くある。でも年を重ねて行くうちに、その作品がふと頭の中に蘇って来て、もう一度振り返ってみたくなる時がある。その作品の真価が本当に突然に分かる時が訪れる。

 ちなみに最後のシーンで、マーラーの『アダージェット』が流れている。ボクはこのクラッシックが大好きで職場で昼寝をしながらよく聴いている。