ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています。毎日更新中@福岡

同性愛者が存在する確率<9>

 もう……金子君と会うことはないだろう。

 そう思ってボクは彼とのメールのやりとりを全て削除した。もしかしたら彼の口から地元の同級生の同性愛者仲間に、ボクと出会ったことが知られるかもしれないけど、そこは心配していなかった。しょせん同性愛者の仲間内から外に漏れる訳がないだろうと思っていた。

 それから社会人になって何年かが過ぎ去った。

 年末年始に実家に帰省して、母親から頼まれて地元のスーパーマーケットに買い物に行った時のことだ。この店に行くと同級生が沢山いる。見たことのある顔が沢山ある。ボクはこの店に入る時は、かなり周囲に気を配っている。親と一緒にいる時に、もし同級生と出会って「神原ってまだ男が好きなの?」などと声をかけられたら困るからだ。店に入ってカゴを取った時に見知った顔が目に入った。

 あっ……金子君がいる。

 少し離れた場所に金子君がいた。買い物かごをカートに乗せて、奥さんらしい女性と一緒に買い物をしていた。カートには彼の子供も一緒に乗せられていた。恐らく見た感じから女の子だろうと思った。ボクは声をかけることもなく彼に見つからないように距離を取った。そして離れた場所から彼の家族を観察していた。彼は奥さんと何かを話しながら買い物していた。

 大変だろうけど、頑張ってるんだな……

 端で見ている限り、誰も彼がゲイなんて想像もできないだろう。

 彼らがレジで会計を済ませて店から出て行くのを見送ってから、ボクはゆっくりと買い物を済ませた。家庭を築いている彼を見て少しだけど嫉妬していた。ボク自身を振り返ると何も進歩していないように思えたからだ。有料ハッテン場などで既婚の同性愛者と肉体関係を交わしたことはあるけど、その人が家族と一緒にいる姿は見たことがなかった。
 
 ボクは帰り道の途中、金子君と二人で話したことを思い出していた。

 彼から話を聞いて小学時代の同級生に、何人も同性愛者がいたことを知って驚いた。小学時代のことではあるけど、彼らはみんな「普通」だったからだ。全く同性愛者には見えなかった。同性愛者であるボクですら判別がつかなかった。

 こうやって街中で知らないすれ違う人たちの中にも同性愛者は沢山いるのだろう。きっとボクが知らないだけで職場や学校にも沢山いるに違いない。

 ボクのように同性愛者であることを隠して独りで生きている人もいるだろう。

 金子君のように同性愛者であることを隠して結婚して生きている人もいるだろう。

 同性愛者であるボク自身が驚いているのだけれど、同性愛者は意外とありきたりな存在なのかもしれない。

<終わり>