同性愛者の性長記録<10>

 田舎で育ったボクはそもそも「同人誌」というものを全く知らなかった。その同人誌がある棚の前で立ち読みしている人を見かけたことはあるけど、女性ばかりだったのでボクには縁のない棚だと勝手に思い込んでいた。

 ボクが手に取った本は原作をもとに独自に創作したストーリーが描かれていた。それに各章の間に四コマのギャグマンガが描かれていた。

 ギャグのつもり何だろうけど、あまり面白くないな……

 そう思いながら棚に本を戻して別の本を手に取った。次の本も少年ジャンプに連載されている漫画のパロディだった。ただ内容が全く違っていた。ページをめくって読み進めていたけど、ボクは途中から目を背けてしまった。そのページには漫画に出ている主人公とヒロインが肉体関係を結んでいるシーンが描かれていたのだ。

 うわ……この棚の本ってアダルト的な描写もあるんだ。

 ボクは男女のアダルト描写には、全くと言って興味がなかった。嫌々ながらもパラパラとページをめくって見ていたが興奮することはなかった。少女漫画チックに描かれた絵から推測して、恐らく作者は女性かと思った。ボクは恥ずかしくなって周囲に人がいないか目を走らせた。

 最近はこんな本も売られているのか……どんな層の人たちが読むんだろう?

 そう思いながら、ボクは本を棚に戻した。そして棚に並べられた本を全体的に眺めていると、棚の一角に気になる表紙の本があることに気がついた。その本はさっき手に取った本と同じように、少年ジャンプに連載されている漫画が少女漫画チックになって描かれているんだけど、大きく違っている点があった。その大きく違っている点とは、原作に登場している男性キャラクター同士が寄り添うように描かれていたのだ。

 あっ……怪しい感じの表紙だな……

 ボクは周囲に人がいないことを確認してから、そっと棚から本を取り出して開いてみた。そしてページをめくるにつれて、ボクは衝撃を受けていた。その本の中には、男性のキャラクター同士が、キスやセックスする描写があったのだ。ボクは再び周囲に人がいないことを確認してから食い入るようにじっくりと読んだ。それまでボクの頭の中の妄想だけで繰り広げてきた世界が描かれていた。生まれて初めて同性同士が肉体関係を持っている描写に出くわしたのだ。棚に目を戻すと、その本があった棚の一角は、他の本も同じように男性キャラクター同士が寄り添うように描かれた表紙ばかりだった。

<つづく>