同性愛者の性長記録<14>

 当時はただ単純に好きな人の写真を手元に置いておきたいというくらいの願望だった。まさか……いきなりおかずにしようなんてことは考えてもいなかった。誰にでも「好きな人の写真が欲しい」って同じような願望は持つと思う。ただ……ボクの場合は、好きになった人が「異性」ではなくて「同性」だったというくらいの違いしかなかった。

 ボクはどうやってN君の写真を手に入れようか思案していた。

 そもそも先生たちはボクがゲイであることを知らなかった。生徒も教師の目の前でボクのことをホモ扱いしようものなら叱責を受けることを自覚していたのだろう。先生がいないタイミングでしかホモ扱いされることはなかったのだ。ただ……そうはいってもN君の写真を何枚も購入していれば「神原って間違って写真を買ってないか?」と指摘される可能性もあった。クラスメイトはボクがN君のことが好きなのは周知事実だったので、先生からそんな指摘されるところを見られたら、「神原ってN君の写真が欲しいんだろ!」と冷やかされるのは目に見えていた。

 あくまでさりげなく……他の写真に紛れ込ませてN君の写真を一枚だけ滑り込ませて購入するしかない!

 ボクはそう決意して、二度と見たくもない自分の顔が写った写真を見つけては用紙に番号を記入していった。そして何枚かあったN君の写真の中で四枚くらい候補を選び、その中から厳選した写真を一枚ほど選んだ。N君が一人だけ写っている写真はなかったので、N君を含めて三人ほど写っている写真を買った。ボクにとってはN君が写った全部の写真の中で一番のお気に入りの写真だった。そして震える手でその写真の番号を用紙に記入して先生に提出した。

 ◇

 数日後、下校時間に先生から購入の申し込みをした写真が手渡された。

 先生は写真を渡す生徒の名前を次々と呼んでいた。みんな写真を入った封筒を受け取ると、すぐに封を開けて写真の見せ合いをして盛り上がっていた。

「神原!」

 ボクは先生から名前を呼ばれて慌てて先生のもとへ行ってドキドキしながら封筒を受け取った。先生から「なんでN君の写真を買ってるの?」なんて指摘されたらどうしようと思ったけどそれは杞憂に終わった。ボクは受け取った封筒をカバンの中に急いで入れた。心の中では早く封を開けてみたいと思いながら、他の生徒から写真を受け取り一緒になって適当に会話をしていた。そして学校の帰り道に一人になってから自転車から降りて封筒から写真を取り出した。

 ボクの手には念願だったN君の写真があった。

<つづく>