ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています。毎日更新中@福岡

映画『二十才の微熱』の感想

二十才の微熱 [DVD]

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 まずは内容をかいつまんで説明する。ネタバレを含むので、もし映画を見るつもりの人は読み飛ばしてほしい。

 主人公は大学生の「たつる」と高校生の「信」の二人だ。大学生の「たつる」の方はゲイではなくて、大学に通いながら生活費を稼ぐために割り切ってゲイバーでホストをしたり、ゲイバーのマスターに頼まれてウリ専のようなことをしている。この生活に至ったのは両親が離婚しているという背景があるようだ。高校生の「信」の方はゲイで親や同級生にもカミングアウトしている。そして同じゲイバーで働いている「たつる」のことが好きになりつつあった。「たつる」と「信」のそれぞれに好意を寄せている女性がいる。高校生の「信」へ好意を寄せている女性は、同じ高校の同級生で「信」がゲイであることを知っていても好意を抱いていた。「たつる」をホテルに呼ぶように指名した客が、「たつる」に好意を寄せている女性の父親で、その女性の引っ越しを手伝いに行った際、自分を指名して寝た相手と偶然に出くわして一緒に食事をする恐ろしいシーンがある。「たつる」の考え方が理解できない「信」は、一時的に同棲するけど、すぐに出て行ってしまう。そんな中、「信」を指名したホテルの宿泊客が「信」の態度に不満でゲイバーにクレームを入れてくる。「たつる」が応援に駆けつけるが、その客は「たつる」と「信」の二人でセックスするように命令する。ざっくり説明するとこんな流れだ。

自分のさみしさって、自分だけのもので、人に分かってもらった気になってごまかすのは嫌じゃない?
僕がなりたいものは、なんでもないもの。

 大学生のたつるの方は、こういった考え方だ。逆に高校生の信は孤独であることが耐えられない。それにデザイナーになって自分の存在を人から認めてもらおうと願望している。性格が正反対の二人が主人公だ。

 この大学生の主人公を見ていると、大学時代の自分のことを思い出した。ボクは見た目は真面目そうに見られることが多い。でも大学時代のボクは真面目そうに見える反面、有料ハッテン場に行ったり、出会い系の掲示板サイトに書き込みして誰かと会ったりしていた。夜になって出会う場所は、その人の家だったりラブホテルだったりと様々だった。

 そのくせ……日中は普通の大学生として大学のキャンパスを歩いた。授業にも出てサークル活動もして課外活動も色々としていた。

 彼らが夜のボクの姿を見たらどう思うだろう……
 
 そう一緒に雑談している仲間を見ながら思ったこともあった。ボクのやっていることは若さを売りにしているウリ専と変わらなかったと思う。ウリ専と違う点と言えば、お金をもらってるかだけだと思う。肉体関係を持っても愛情はなくて、利害関係が一致しただけの一晩だけの相手だった。

 映画を見ていて印象に残っているシーンがある。たつるがホテルでお客の相手をした後、朝方になってホテルから出て近くの自販機で飲み物を買うシーンがある。何を買ったのか見えなかったけど、恐らく水を買ったんだと思う。そして飲み物を買った後、口をゆすいで道端に吐き出すシーンがある。これは想像でしかないけど、恐らくホテルでシャワーを浴びた後にも口をゆすいでるはずだ。それなのに一人になってから、もう一度同じことをしているのだ。ボクも同じようなことをした記憶が何度もある。

 キスするのが汚いと思う相手と何でキスしてるんだろう……

 ボクは早朝になって、泊まっていた人の家から出て道を歩きながら、目についた自販機で水を買って何度も口をゆすいでいた。まるで汚いものを吐き出すかのようにだ。ラブホテルや相手の家で、もっと入念にゆすいだり、うがいをしてもいいのかもしれないけど、その音が相手に聞こえると汚いもの相手にしているようで申し訳ない気もしていた。でも本当に相手のことが好きだったら、こんなことをする必要もないはずだ。好きでもないどこの誰だか分からない相手とキスしたりするから、こんなことをするんだ。口をゆすいで道端に吐き出しながら、少しの間だけどボクは自己嫌悪に陥っていた。

 この映画監督の橋口亮輔さんもゲイらしくカミングアウトしているようだ。映画のラスト15分間くらいにホテルに主人公二人を呼び出して、二人でセックスするように強要するお客が橋口監督らしい。ずっと延々としゃべり倒している客が、この橋口監督なのだ。このラスト15分はハンディカメラで撮影しているようで物凄く画面がぶれている。それまでのホテルシーンでは、この撮影方法は全く使用されていなかった。おそらくアダルトビデオを意識したような撮影方法にしていると思う。カメラマンの足音のようなものまで微かに聞こえているのだ。この監督が延々と喋っている内容は、きっと監督の人生体験なんだと思う。

 ちなみにこの映画の見所はラスト40分くらいからだ。その間は目が離せない。