同性愛者の性長記録<17>

 えぇ! なんで急に裸の女性が出て来たの?

 ボクは慌てて手元のテレビのリモコンを見た。自分が押したと思われるボタンを見ると、「有料チャンネル」と記載されていた。テレビの中では綺麗な女性がドアップで映っていて、激しく声をあげて若い男性とセックスしていた。ボクはすぐにチャンネルを切り替えた。

 あぁ……びっくりしたな。そっか有料チャンネルを見てしまったのか。
 
 流石に田舎育ちのボクでもホテルのテレビで、こういったアダルトビデオが見れることは知っていた。恐らく何かの映画やドラマのシーンで見て知ったんだと思う。

 もしかして有料チャンネルのボタンを間違え押しただけで、お金が取られるのかな?

 まだ高校生だったボクには、有料チャンネルの仕組みがよく分かってしなかった。見たくもないものを誤って見てしまってお金を請求されるなんてまっぴらごめんだった。例えばチェックアウトする際に、「お客様は有料チャンネルを見てらっしゃるので、その分の料金をお願いします」と言われて、「すみません……ボクはゲイなんで間違って有料チャンネルのボタンを押してしまったんです」と答えれば、「そうですか。なら請求は結構ですので」とかいう展開にならないのかな?と馬鹿な展開を想像してみたりもした。ボクは現実に戻って部屋に置かれている冊子を見つけて、有料チャンネルの説明文を読んだ。どうやら最初の数分間は無料のようで、きちんと有料の手続きを踏まないとお金はかからないことが分かって安心した。

 それからというもの、ボクは受験会場に行って試験を受けて、ホテルに戻って勉強する日々を繰り返し送っていた。

 それから4日ほど経った夜のことだった……ボクはついに限界に達していた。

 それは何の限界というと……つまり性欲の限界に達したのだ。育ち盛りの高校三年生だから仕方がないといえばそうなのだが、寝ようにも性欲が溜まって寝れなくなっていた。それじゃあ性欲を発散しよう!としても慣れないホテルの中だ。ボクが家から持って来たのは、問題集や参考書くらいでおかずになるようなものは何もなかった。

 どうしよう……アニメ雑誌かN君の写真でも何か持って来ればよかったな。

 こんな事態になることを想定しておらず、ボクは性欲を満たすために「どこかの本屋にでも行って、おかずにできそうな本でも買ってこような?」とか考えていた。ホテルの窓から外を見ると都会だけあって、まだ人がぞろぞろ歩いていた。どこかの本屋が開いてるかもしれないし、それにコンビニでも行って買ってこようかと思っていた。でも見知らぬ夜の街の中を歩く勇気もなかった。街のいたるところで風俗のチラシが貼っていて、あどけない純粋な田舎少年の目には治安が悪そうにしか見えなかった。この時代にもしスマホがあれば、ゲイアプリで誰かと会話してホテルに連れ込むなんて大胆なことができたかもしれない。ただ……仮にゲイアプリが使えたとしても、高校時代のボクのことだから慎重過ぎて、そこまで踏み込めなかったと思うけど。

 ボクは部屋で悶々としていた。もう諦めて頭の中の妄想だけで性欲を処理しようかと思っていた。そんな中……ふとある名案が頭をよぎった。

<つづく>