同性愛者の性長記録<18>

 ボクはテレビのリモコンを手に取った。そして勇気を出して有料チャンネルのボタンを押した。すると予期していたが直ぐに裸の女性が画面に現れた。ボクは少し目を背けつつも次々と有料チャンネルを変えていき、ある有料チャンネルで停止した。そして部屋のカーテンを締めてからベッドに腰掛けてズボンを下ろした。

 テレビの画面には、若い裸の女性が映っていた。そしてもう一人……若い裸の男性も映っていた。

 ボクは最初に間違って有料チャネルを見てしまった時に、あるものを目ざとく見つけていたのだ。それは若い男性の裸だった。すぐに画面を消しつつも裸の男性の姿が目に焼き付いていたのだ。ボクが止めたチャンネルは裸の男性が比較的多く映っているもので、ありがたいことにサンプルビデオは1分くらい長さで同じシーンを繰り返し流していた。

 ボクは画面に映る男女のセックスをするビデオを見ていた。ただボクが見ているのは裸の男性だけだった。

 男性の声はほとんど聞こえず女性の喘ぎ声ばかりが聞こえて邪魔だったので、ボクはリモコンの消音ボタンを押して、無音でアダルトビデオを見ていた。 写真と違ってビデオだと女性の姿を隠すことはできず、どうしても視界に入ってしまうのだけれど、それはどうしようもなかった。ボクはただ若い男性の姿にだけ意識を集中させていた。男性は二十代前半くらいで真面目そうでモテそうな感じのイケメンだった。

 この日が、ボクにとって初めてアダルトビデオをおかずにした日になった。情けないことに……初めて見たアダルトビデオがホテルのサンプルビデオの上に、しかもゲイ向けではなくてノンケ向けのアダルトビデオだった。ボクは受験中のホテル住まいの間、このアダルトビデオのサンプルに何度かお世話になった。ただ、その性行為は全く気持ちよくなかった。性欲を発散させないと寝ることができなかったから仕方がなくしただけだった。

 ◇

 

 その日以降、ノンケ向けのアダルトビデオなんて全く見たことがない。大学生になって友達の家に行くと、部屋にアダルトビデオが散乱していることなんてよくあった。

「そのビデオ貸そうか?」
 
 ボクが手にとってパッケージを見ていると、友人がそう言って勧めてきた。

「いや……いいよ。だって人がヌイたビデオを借りてヌクのって生々しいじゃん」

 ボクはパッケージを見ていたのは、その受験の日を思い出すのと、このビデオって裸の男性が映っているのかな?という好奇心からだった。根本的に友人とは関心の対象が違っていたのだ。

<つづく>