書籍『ゲイ・カルチャーの未来へ』の感想

ゲイ・カルチャーの未来へ (ele-king books)

ゲイ・カルチャーの未来へ (ele-king books)

  • 作者: 田亀源五郎,木津毅
  • 出版社/メーカー: Pヴァイン
  • 発売日: 2017/10/31
  • メディア: 単行本
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 『ゲイ・カルチャーの未来へ』は2017年10月31日に発売している。つい最近に発売された本だ。

 この本だけど、少し前に『世界のねじを巻くブログ』さんで紹介されていた。その紹介記事を読んでから、すぐに購入して読んでしまった。なんとなく今のボクが知りたいことが書いてるんじゃないかな?と予感がして買ったんだけど思った通りだった。ボクの今後の生き方のヒントにできるような言葉のオンパレードで、買ってよかったと心から思っている。恐らく『世界のねじを巻くブログ』さんが紹介してくださらなかったら、気がつくこともなかったかもしれないので本当に感謝している。 

 

 著者の田亀源五郎さんは、このサイトでも紹介した『弟の夫』などの漫画本を書いたり、ゲイ向けの雑誌にもイラストや漫画を書いたりもしている。幅広く活動されているので漫画家と紹介するのも違うと思う。この本のあらすじは、ゲイカルチャーの歴史を紹介しながら、著者の田亀源五郎さんの人生や考え方の紹介をしている。また漫画『弟の夫』に関する背景についても紹介している。田亀さんは子供の時から絵を描くのが好きで、その絵を通してゲイカルチャーとして発信している。

 この本の後半では、何度もゲイの当事者が何らかの情報発信するように促している。さらに本の中では、LGBT当事者がメディアなどに出て情報発信することで、多様性が生まれるとも指摘している(P.162)。また何か次世代に残して、次の世代がそれによって生きやすくなるということが重要とも指摘している(P.196)。

    先日、フジテレビの番組に「保毛尾田保毛男」が再登場して炎上していた。ボクは保毛尾田保毛男を見ても、特に嫌悪感を抱くことはなかった。むしろ苦くて懐かしい気持ちになっていた。でも同じゲイでもネットでは批判的な記事を書いている人もいて、ボクはその記事を読みながら色々な視点があって面白いと思っていた。ゲイの当事者から「寛容的な意見」と「批判的な意見」が書き込みがあり、このニュースの興味深かったのは、ここまでゲイの人たちの意見が表立って分れて世間に晒されたのは珍しいと思ったからだ。

 この本は気になる言葉ばかりだったんだけど、特に情報発信に関する言葉が気になったので一部だけ抜粋する。

 

東京オリンピックが終わったら、LGBTなんて言葉は一切でてこなくなるような可能性だってあるかもしれない。そうならないためには、当事者が可視化することですよ。それが一番です。オープンにできない人もいるでしょうから、それはそれで仕方がないですが、自分ができること、自分がすべきだと思ったこと、自分が面白いと思ったことを少しずつやっていくといいかなという気はしますね。他の人がやっていることを見て文句を言うことで自分の時間を使うのはバカバカしいから、それを批判して長文を書く暇があったら、自分自身の言説を作って、もしくは作品を作って出したほうが、世間のためにもその人もためにもいいと思います(P.178)。
自分の欲しいものが世の中になければ、それは自分が作ればいい。(P.239 あとがき)

 以前、ボクは石川大我さんの『ボクの彼氏はどこにいる?』という本を読んだ感想を書いた。その感想の中で『ボクの彼氏はどこにいる?』という本が、このサイトをはじめるきっかけになったと書いた。

 『ボクの彼氏はどこにいる?』を読んで、ゲイとして生きていく上で、綺麗な面だけでなくて汚い面も含めて文章にしてくれる人がいないのかな?と思っていた。そして子供から大人になるまでに、ゲイとして生きて行く上で起こった出来事を、もっと詳細に文章にしてくれないかな?と思っていた。

 ずっとボクは……誰かがボクの望んでいるような文章を書いてくれるのではないかと待っていた。ボクは自分から発信するタイプの人種ではなくて、誰かが発信したコンテンツを受けて楽しめればよかった。でも……どんなに待ってもボクの目の届く範囲で現れることはなかった。

 誰も書いてくれないのなら、自分が書いてみれば?

 そう思ったこともあったけど、ボクは文章が下手だし、自分のことを赤裸々に書くのは躊躇われるし、誰かが文章を読んでボクに気がついたらヤバイし……そうやって次々と自分の中で言い訳をしてた。それからゲイブログを書いている人たち(chuckさんを筆頭に)の文章を読んで後押しされ、恥ずかしいけど……ボクもやってみようかな?と決意した流れだ(他にも色々と行き詰まっていたという理由はあるけど)。

 明日の記事にも書くつもりだけど、LGBTはブーム真っ最中だ。

 ブームで終わらせないためにも、ボクと同じようにゲイブログを書いている人たちの文章を読んで、新しく何らかの情報発信する人が増えてくれればいいなと願っている。