LGBTブームと気持ちの変化<1>

 11月9日。この文章を書いてる日付からは一昨日にあたる。
 
 仕事が休みだったので西鉄電車に乗って天神に向かっていた。正確には百道浜の福岡市博物館でやっている展覧会に向かっていた。平日の通勤時間に乗ったので空いている席もなかった。ボクは電車の車両間に移動して壁に背を持たれて本を開いて読んでいた。

 読んでいる本のタイトルは『ゲイ・カルチャーの未来へ』。

 こんなタイトルの本を満員電車の中で読むのは恥ずかしかったけど、早く読みたいという気持ちが優っていた。本のカバーには裸の男性のイラストがあったので外して読んでいた。時折、見出しで「ゲイ」や「カミングアウト」という言葉が強調されているので、近くに立っている人に見られないように、まずい言葉を指で隠しながら読んでいた。そして天神に着いてから福岡タワー行きのバスに乗った。ボクはバスの中でも手すりの皮を持ったまま夢中になって読んでいた。展覧会から天神に戻るバスの中でも、その本を読んでいて天神に戻ってからもロフト近くにあるスタバでも本を読んでいた。そしてようやく本を読み終えた。

 その本を読み終えて閉じた後にふと思った。

 この本って本屋のどこの辺りに置いてるんだろう……先日に発売されたばかりだから探せば見つかるはずだけど……

 天神にある本屋のジュンク堂に移動して探してみることにした。ボクはこの本をネットショップ経由で購入してた。他にも同性愛関連の書籍や映画を買ってるけど、全てネットショップ経由で購入していた。まだ本屋で同性愛のタイトルがついた本を買う勇気は持てなかった。

 ジュンク堂に入って、1階の新刊コーナーに行って探してみたけど見つからなかった。2階の小説コーナーを探しても見つからなかった。店内の書籍を検索する機械があるけど、なんだか「ゲイ」という言葉を打つのに周囲の視線が気になって躊躇われた。

 もしかして3階の専門書コーナーにあるのかも?

 そう思って3階に移動した。3階には医学・教育・工学・思想・ビジネスといった難しい専門書が売られていた。同性愛をテーマにしているので思想関連の棚を探してみたけどなかった。教育関連の棚を探してみたけどなかった。心理学関連の棚を探してみたけどLGBT関連の書籍が数冊ほど目に入ったけどなかった。

 まさか医療関連の棚にはないよね……

 そう思いつつ医療関連の棚を探してみたけどなかった。ボクは諦めて3階にある機械で検索してみようと思って移動しようとした時だった。医学関連の棚の向かいに特設コーナーが設けられて「LGBT」という文字が並んでいる本が沢山あるのに気がついた。

 LGBT特集してる……もしかしたらあの本が置いてるかも……

 ボクは左棚の端から順番に目で追った。既に読んだことがある本が何冊もあった。すぐそばに女性の店員がいたので、なんだかそわそわした。ボクは興味がなさそうな振りをして探していた。ボクの鞄の中には、その探してる本が入っているのだ。カバンに入っている本を、本屋で探してるなんておかしい気がするけど、この本が本屋でどんな扱いをされているのか実際に目で見たかった。

 あっ……見つけた!

 そしてボクは棚の右端に探していた本を見つけた。

 

<つづく>