ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

仕事に生きる同性愛者<11>

「ヤバい……涙が流れはじめた」と思った。そして「すぐに止めないと」と思った。でも涙は止まるどころか、もっと急いよく流れ始めた。鳴き止むどころか呼吸が苦しくなって、すすり泣きしていた。ボクは一人の時に泣くことは多いんだけど、過去に人前で泣いたことはなかった。母親ですら小学時代から泣いた姿を見たことがないと言っていた。嫌なことがあっても黙って我慢している子供だったと言われていた。まさか大人になって人前で泣いてしまうなんて思いもよらなかった。

「泣くなよ……そんなに部署異動が嫌か?」
「……」

 ボクは首を首を振るので精一杯だった。すすり泣きが止まらなかった。

「○○部の仕事内容は本当にお前の性格には合ってると思うけど?」
「……」

 部署異動が嫌というよりは、暇になって孤独な時間は増えることが怖かった。じゃあデートや結婚でもしてプライベートを充実したら?と言われても、それは出来なかった。きっとカミングアウトしない限り理解してもらえないだろうと思った。
 
 そのままボクが泣き止むのを待って面談は終わった。上司には本当の理由は説明できないで終わってしまった。ボクは人前で泣いてしまったことが猛烈に恥ずかしかった。でもこの上司はボクが面談で泣いたことを、他の社員には他言しないだろうという確信はあった。ボクが自席に戻って数10分後には、ホモ扱いしてイジってきた。ボクはいつものように笑って受け流していた。ただ……いつもよりは優しいイジり方だと思った。

 この上司が勧めてくれた○○部の異動については、ボクが泣いてしまったせいなのかご破算になってしまった。

 これは転職後の話になるんだけど、ボクの今の仕事内容は、恐らく○○部に異動したらしていたであろう仕事内容とほとんど同じだ。

 そっか……あの上司は本当にボクのことをよく見てくれてたんだ。

 そのことに転職後してから数年してよくやく気がついた。ボクは今の仕事内容が自分の性格にぴったりだと思っている。そしてボクは今更になって自分のことを大切に思ってくれた上司に感謝したい気持ちになっていた。でも今はお礼を言うこともできなくなっていた。若い頃のボクは自分の目先のことに精一杯で、身近に大切に見ていてくれた人がいたことに気がつきもしてなかった。

 若い頃は、ひたすら仕事を詰め込んで孤独感を紛らわしていた。でもボクは根本的に分かっていなかった。例えば失恋による一時的な寂しさは、仕事に没頭していれば時間が流れるとともに消えていくのかもしれない。でも孤独という人間が持っている根源的なものに関しては、どんなに仕事を没頭していても逃げられるものではないことに気がついていなかった。

<つづく>