漫画『同性婚で親子になりました。』の感想

同性婚で親子になりました。 (本当にあった笑える話)

同性婚で親子になりました。 (本当にあった笑える話)

 

 この本を読み始めた時、本のタイトルを勘違いしていた。『同性婚で親子になりました。』が正式なタイトルなんだけど、『同性婚で夫婦になりました。』と思っていた。そっか日本では「夫婦」になることはできないから、タイトルが「親子」なのか!と読んでいる途中で、本のタイトルを見直して誤解していることに気がついた。ボクは電子書籍で読んだけど読書時間は1時間もかからないと思う。

 内容を簡単に説明すると、八木裕太さん(まんがを書いている作者)と京太さんのゲイの同性カップルの話だ。二人とも性格が「オタク」という共通点があり、気が合って2011年に「同性婚」している。もちろん日本では同性婚はできないので、「養子縁組」という形で同性婚している。養子縁組ということなので、作者の八木さんが京太さんの子供という形になっているため、二人は年の差もほとんどないのに、父と子という関係だ。養子縁組をする際に、両親に同意を得て役所に提出などの経緯が書かれている。実際に養子縁組をするために役所に届け出する際の記入例も書かれている。読んだ限りでは両親の同意さえもらえれば役所の届出はあっという間に終わるようだ。
 
 話のメインは養子縁組の流れだけど、二人の出会いや両親へのカミングアウトや養子縁組するまでの両親の説得など、深刻になりそうな話を明るく感じの絵柄で描いているため、スラスラ笑いながら読めてしまう。

 ボクもこの本を読むまでは、「同性同士で養子縁組まではしなくてもいいんじゃないか?」と思ってたんだけど、ただの同性同士の同居という形だと、①遺産相続ができない。②手術などの同意の権利もない。などのデメリッドもあるなどの紹介されていた。養子縁組をすれば、家族の一員になれるため解決される。ただ養子に入る人の名字が変わってしまう、どっちの家の墓に入ればいいのか迷うなどのデメリッドもあるようだ。特に②手術の同意の権利もないについては、海外の医療ドラマを見ている時に同じようなシーンを何度か見た。同性同士のカップルが病院に来て、延命拒否の意思を理解しているため医師に伝えるけど、後から来た家族が延命を依頼して、同性カップルの片方は他人だから何の権利もないという流れだった。

 この本を読んで、ボクは2つ気になったことがあった。

 まずは1つ目の気になった点は、作者の八木さんが母親にゲイであることをカミングアウトするシーンだ。この二人はカミングアウトする8年間ほど前から、両親が公認する形で同棲している。八木さんも男同士で8年間も同棲してるから、母親は自分がゲイであると感づいているのではないかと思って、父親より先に母親にカミングアウトしている。ところが自分の子供がゲイであると全く気がついていなかったという話がった。
 
 ボクの母親も息子がゲイであることに感づいてるはずなんだけど、本気で問い詰められたことがない。30歳半ばになっても結婚の催促もしてこない。むしろ「結婚って大していいことだと思ってないし結婚しなくてもいいよ」と言ってくるくらいだ。ボクもいつか……正式にカミングアウトすることがあったら母親からするつもりだ。全く息子がゲイだと気がついてなかったら、それはそれでカミングアウトしても困るよなって思った。未だに自分の母親は息子がゲイであることを確信しているのか全く掴めない。ちなみに八木さんの父親は全く理解してもらえない性格で、最初から理解してもらうより、どう養子縁組を認めさせるかについて悩んでいた。きっとボクの父親も同じようなものだと思う。

 次に2つ目の気になった点は、二人が出会うきっかけだ。コミックマートの祭典で、作者の八木さんがゲイ向けの漫画を売っていたらしく、お客で読者の京太さんと出会って文通を始めたのがきっかけだったようだ。公の場でゲイ向けの漫画を描いているので、作者の八木さんも、読者の京太さんもお互いにゲイだという認識があったようだ。

 二人の出会いを読んでて、公の場でカミングアウトしているのって大事だよな……と思った。

 特に今年の11月になってから心境が変化しているけど、ボクも職場ではない別の場所でカミングアウトしてしまおうか?……と思っている。もう有料ハッテン場やゲイ向けの出会い系アプリはコリゴリだ。どうするのか具体的に考えていないけど、もしどこか別の場所でカミングアウトしていて、それがきっかけで職場の人にバレても……もういいかな?と思えるようになってきた。

 この本は養子縁組の解説も丁寧でわかりやすく、その他のサイドストーリーも面白くてオススメです。