ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています。毎日更新中@福岡

愛から遠く離れて<1>

 うっすらと目を開けると、目の前には知らない男性の顔があった。

 この人……誰だっけ?

 ボクは名前も知らない人に腕枕をされていた。しばらく彼の顔を見ていたけど体を起こして周囲を見渡した。既に夜は明けて、カーテン越しに朝日が差し込んでいた。ボクがいたのは1LDKの狭い部屋だった。部屋にものは散乱しておらず綺麗に整理されたいた。壁にはスーツが数着かけられていて、彼が社会人で働いていることが分かった。ボクは昨日の夜に脱ぎ捨ててベッドの下に散乱している衣服から自分の下着を探した。

 そうか……昨日はこの人の家に泊まったんだ。

 ボクは下着を身につけて、もう一度布団に入って彼の腕枕に頭を載せた。それからずっと彼の寝顔を見ていた。彼と肉体関係を持つのは、これで4度目だった。それなのに未だに彼の名前も知らないし、彼の仕事も知らない。知っているのは、「たかぽん」というメール上の名前と年齢。あとはこの家の場所だけだった。メールとのやりとりでは、ボクより5歳年上だった。顔はあっさりとしていて実際の年齢よりは若く見えた。身長は170センチくらいで細身のメガネをかけた男性だった。見た感じは職場で仕事をしているというよりは、どこかの大学院にでも行ってそうな雰囲気の男性だった。大学生になってから何人かの男性と関係を持ったけど、この人との関係した回数が一番多かった。

 朝の6時半になると、目覚まし時計のアラームが鳴った。彼は寝起きが悪いようでなかなか起きなかった。ボクは起き上がって「朝ですよ」と彼の体を揺らしながら声をかけていた。

「邪魔だから、ボクは帰りますね」
 
 彼が目を覚ましたことを確認して、ボクはそう言った。出勤の準備を邪魔してはいけないと思った。彼は眠気覚ましに布団の上で体を伸ばしていた。そして眠そうな声で言った。

「朝ごはん食べない?」
「いえ。家に戻ってから食べるんでいいです」
「授業はいつから?」
「2限目の10時半からです」
「じゃ……一緒に家から出ようよ」
 
 どうしようか迷っていたけど、どうせすることもないのでボクは彼の提案に従うことにした。それに男同士で陽のあたる時間帯に一緒に家を出て歩くというシーンに憧れもあった。

<つづく>