愛から遠く離れて<4>

 ボクはハンドルネームを「おみ」という名前にして入室した。先に入室していた相手の名前は「たかぽん」だった。

おみ:こんばんわ!
たかぽん:こんばんわ
おみ:京都市内のどこに住んでるんですか? ボクは●区に住んでます。
たかぽん:こっちは四条大宮に住んでるよ。

  ボクは自分が大学生であること伝えて、お互いの趣味の話などして自己紹介をした。会話を続けていくと徐々にお互いの性格が分かってきた。

たかぽん:おみ君ってゲイぽくなさそうだね?

 彼から急にそう指摘された。

おみ:そうなんですよ。ゲイの人と会ってもこっちぽくないねって言われます。
たかぽん:俺もゲイぽくないって言われる。短髪じゃないし体を鍛えてもないし日焼けしてもないよ。
おみ:ボクは普通な感じの人が好きです。短髪や体を鍛えてなくてもいいです。
たかぽん:俺も普通な感じの人が好きかな。でもこっちの人って似たような感じの人が多いよね。
おみ:そうなんです。ボクの好きなタイプの人って少なくて出会いがないです。
たかぽん:俺も似たような状態だよ。

 チャット上でしか分からないけど、なんだか好みのタイプが合いそうだなと思った。

おみ:たかぽんさんは、ハッテン場とか行くんですか?
たかぽん:西●極とか京都●所には行かないよ。
おみ:ボクも野外のハッテン場には行かないです。
たかぽん:野外に行ったことないの?
おみ:どんなところから興味があったんで野外のハッテン場を巡ってみたんですよ。
たかぽん:おぉ!ハッテン場めぐりか。いい趣味だね。
おみ:趣味がハッテン場めぐりなんて公衆の面前で言えないです。
たかぽん:はははは。ぽかーんだね。
おみ:それで西●極に行ったんですよ。
たかぽん:おお……どうだった?
おみ:トイレ前の暗いベンチにこっちの人が5人いて、全裸の人が2人いました。
たかぽん:はははは! 危ない危ない!
おみ:そのベンチの近くを部活帰りの女子高生が歩いてました。
たかぽん:逮捕されるよ。
おみ:驚いてすぐに帰っちゃいました。
たかぽん:そう言いつつ君も全裸になったんでしょ?(笑)
おみ:全裸とか絶対になりませんよ!
たかぽん:野外でやる人って凄いよね。俺はサポーター(京都市内の有料ハッテン場)には行くかな?
おみ:ボクも時々行ってますよ。いつかサポーターで会うかもしれませんね?
たかぽん:既にサポーターで会ってるかもよ。実はもう寝た関係とか?
おみ:そうかも。もしくはお互いに好みじゃなくて、睨み合ってるとか(笑)
たかぽん:前に体を触ろうとして舌打ちされた人かな?
おみ:舌打ちはしないですよ。露骨に嫌って態度は取ってるかもしれませんけど。
たかぽん:はははは。俺は滅多にサポーターには行かないからね。

 ボクらは1時間くらいチャットをして「明日も仕事だからそろそろ寝るね」という話になって「おやすみなさい」と別れを告げた。

 彼が出て行って誰もいなくなったチャットルームを見ながら、ボクは「なんだか、この人は気が合うかもしれない」と思った。他のチャットで出会った人は、顔はどんな感じ?とか体型はどんな感じ?とか芸能人の誰に似てるの?とか外見的なことばかり次々と質問してきた。もしくは写真をくれない?とか、電話でテレフォンセックスしない?とかも言われたりした。もちろん中には、普通に雑談して終わった人も何人かいたけど、遠くに住んでいる人ばかりだった。同じ京都市内に住んでいて、同年代でなんだか彼とは性格も合いそうだと思った。

 ボクはもう一度、彼とチャットをしたいと思った。そして実際に会ってみたいと思った。

 

<つづく>