愛から遠く離れて<12>

 ボクが向ったある公園。それは鴨川沿いの出町柳駅の近くにある公園で野外のハッテン場になっていた。ボクは「京都ハッテン場ガイド」というホームページを見て、その公園が野外のハッテン場であることを知っていた。ボクは誰か話しができるゲイ仲間を求めて公園に向かって歩きだした。

 それから鴨川沿いを10分も歩くとその公園に到着した。狭い公園でトイレが発展場のスポットになっているらしい。でも公園に入ってトイレ前まで行ってみたけど誰もいなかった。

 誰もいないのか……同年代の人とかいないのかな……

 ボクはトイレ前のベンチに座って携帯をいじって時間を潰していた。しばらくするとトイレの中で微かな物音が聞こえて来た。

 誰かトイレの中にいるのかな?

 しばらく耳を澄ませたけど物音がしないので、きっとボクの聞き間違いだろうと思った。それに確かめるにもトイレに入るのも怖かった。別に野外で誰か肉体関係を持つつもりもなかった。ボクはただ話し相手が欲しかった。それからしばらく公園内を歩き回ってからトイレ前のベンチに戻って来た。
 
 やっぱり誰もいないよね……もう家に帰ろうかな。

 そう思った時だったトイレの中で人の気配がしたので、ボクはそちらの方に目を向けた。

「はぁ?」

 ボクの目の先には全裸の男性がいた。トイレの入り口近くに全裸の男性が立っていてボクの方をじっと見つめていた。40代ぐらいの日焼けした男性だった。ボクと目が合うと彼は股間に手を当ててしごシゴき始めた。

 あちゃ〜〜やっぱりこのパターンなのか!

 そもそも野外のハッテン場で出会いや話し相手を求める時点で、おかしいのかもしれない。大人になった今になって振り返ると、「そりゃ無理だろう」と思うけど、当時のボクはいまいち理解できていなかった。ゲイ仲間同士で分かり合える何かがあると信じていた。他の野外のハッテン場をめぐり歩いていたので、野外で全裸になっている男性を見るのは始めてではなかった。でもトイレの照明が煌々と照らしている場所で全裸になっている人は初めて見た。今まで見た全裸の人たちは野外の薄暗い場所で隠れて全裸になっていた。

 話しをするどころか、ヤル気満々だな……

 彼は野外で全裸でシゴいている姿を見られて興奮しているのか、股間を突き出してボクにアピールして誘って来た。ボクは興奮するどころかドン引きしていた。

 ゲイってこんな人ばっかりだな……

 ボクはうんざりして全裸の男性を無視して公園の出口に向かった。そして出口まで行ってトイレの方を振り返るともう全裸の男性の姿は消えていた。それから鴨川の河川敷まで戻った。繁華街から離れたせいか河川敷には誰もいなくなっていた。それからベンチに座って今日一日に起こった出来事を思い出していた。

<つづく>