ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

愛から遠く離れて<13>

 みんな病気になって死んじゃえばいいのに……

 ボクはベンチに座って鴨川を見ながらそう考えていた。数日前に雨が降った影響で川の水量がかなり多かったのを今でも覚えている。たかぽんさんもトイレ前で全裸だった人も、ボクには彼らが何を考えているのか理解できなかった。

友達か……難しいね。この世界ってセックスありきじゃないかな?

 イサムさんの言葉が頭の中に浮かんだ。イサムさんは1年ぐらい前にゲイ向けの出会い系の掲示板を通して出会った女装した人だった。当時のボクはゲイの世界に無知で希望を抱いていたけど、ようやく彼の言葉が実感できるようになっていた。もちろん肉体的な関係も愛情の一部なので否定しないけど、精神的な関係よりも肉体的な関係ばかりが目立っていた。ボクは恋愛感情を抱く時には、いつも性格や考え方など精神的な面から魅かれていき、その後についていく形で肉体的な面に魅かれていった。
 
 結局、野外のハッテン場にしても有料のハッテン場にしても、そもそも同性同士でセックスすることを目的として集まっている訳で、そんな場所できちんとした出会い求める事自体が間違っていると思う。でも大学時代のボクは理解できていなかった。それにいつもあれこれ考えてしまって慎重になってしまって思いきった行動ができなかった。いっそのこと、さっきの公園に戻って何も考えないで全裸の男性に抱かれてしまえば楽なのかもしれなかったけど、ボクにはとてもできなかった。

 大学生になって3年が経っていた。自分がゲイであることに向き合って生きると決めたのが大学2年生。既に1年以上経っていた。ボクは高校時代を最後に全く恋愛感情を抱けなくなっていた。初めて好きになれるかもしれないと思った、たかぽんさんとの関係も今日で終わった。

 ボクはベンチに座って小声で歌っていた。

愛から遥か遠く離れてしまう時が
この世にあると思いもせず いられた自分が懐かしい
愛から遥か遠く離れて生きる時は
時計を海に捨てに行こう 永遠のリフレインに

 高校時代に買ったCDに入っていた歌[※]で、当時は好きな人もいたから歌詞の中にある「愛から遥か遠く離れてしまう時」なんてありえないと思っていた。でも今のボクの状態は歌詞にぴったりの心境だった。小声で歌っていると歌詞が胸に染み込んできた。ボクはこの歌を大学時代になってから飽きる事なく聴き続けていた。それから1時間近くベンチに座ってこれからどうしようと考えていた。

 ◇

 あの日からしばらくの間、ボクは普通の大学生活に戻っていた。そして3週間くらい経ったある日の夕方だった。ボクは退屈紛れに窓の外の夕陽を眺めながら講義を聴いていると携帯にメールを着信の通知が表示された。

 誰からのメールだろう?

 ボクは授業中にこっそりと携帯を開いてメールの確認をした。そしてメールの差出人を見て驚いた。

たかぽんです。今日の夜にうちに来ない? 

 メールにはそう書いてあった。ボクはメールを見て戸惑った。そしてしばらくしてから激しく怒りがこみ上げてきた。

<つづく>

[※]中島みゆき 愛から遠く離れて
http://j-lyric.net/artist/a000701/l00f506.html