ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています。毎日更新中@福岡

愛から遠く離れて<16>

 はっきり言ってショックだった。彼には暗闇の中とはいっても、きちんとボクのことに気が付いて欲しかった。京都では何十人ものゲイの人たちと会ってきたけど、一番長い関係を持った人がたかぽんさんだった。それなのにこのザマだった。

 大学を卒業して東京に行くと京都には来る機会も無くなるし、ボクはしばらくして通路に出て、たかぽんさんを探した。これで彼と会う機会はないだろうと思った。彼に話かけるつもりはなかったけど最後に彼の姿を見たいと思った。けれど彼の姿は見つからなかった。一つだけ個室のドアが閉まっていて誰かがやり合っているが音が漏れていた。

 きっと彼はこの中にいるんだろうな……

 たかぽんさんに似た声が漏れていた。2人で話す笑い声や、キスやセックスする際に漏れる音が交互に聞こえてきた。ボクはドアの前に立って耳を澄ませていた。部屋の中から聴こえて来る声や音を聞きながら、彼に対する「怒り」や「嫉妬」などの感情、そして自分に対する「嫌悪」や「孤独」などの感情がぐちゃぐちゃになって湧き起こってきた。

 ボクはいったい何をしてるんだろう……
 
 部屋から漏れている物音を聞きながらそう思った。裸にタオル一枚を腰に巻いて立っている自分の姿がバカバカしくなってきた。ボクのやっていることは場所は違えど、あの鴨川の沿いの野外のトイレ前に全裸でいた人と変わらないと思った。

 さようなら。傷つけてごめんなさい。

 彼のいる部屋に向かって心の中で別れを告げた。それから服を着て店を出た。もう二度とこの店に来ることは無いと思った。実際にボクが次に京都に訪れたのは10年以上経ってからだった。その時には「サポーター」は閉店していた。

 外に出ると京都の冬は底冷えするような寒さだった。以前と同じように鴨川の河川敷を歩きながら、よく聴いていたあの歌[*]を小声で歌っていた。

一番好きな服を着て 一番好きな私でいよう
いつか或る日思いがけず船が出るかもしれないから
愛から遥か遠く離れて生きる時は
時計を海に捨てに行こう 永遠のリフレインに

 ある歌詞が胸に突き刺さってきた。

「一番好きな私でいよう」か……嫌なこと歌詞に書いてくれるよな。

 また暗闇の中で裸でタオル一枚巻いて立っている自分の姿を思い出した。

 きっと今のボクは自分のことが好きじゃないだろうな……

 むしろ「自分のことを好きじゃない」どころか「自分のことが嫌い」だと思った。結局、彼に復讐して残ったものは自己嫌悪だけだった。いつかきっと今の状況が変わるまでに、少しでも「自分のことが好き」でいたいと思った。
 
<終わり>

[※]中島みゆき 愛から遠く離れて
http://j-lyric.net/artist/a000701/l00f506.html

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