書籍『僕たちのカラフルな毎日』の感想

僕たちのカラフルな毎日~弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記~

僕たちのカラフルな毎日~弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記~

 

『僕たちのカラフルな毎日』という本を読んだ。南和行さん、吉田昌史さんの2人が作者だけど、基本的には南くんが文章を書いていて、各章の途中で吉田くんのあとがき(フォロー)が入る形で書かれている。作者の2人は弁護士で大阪で弁護士事務所を開いて一緒に働いている。

 

 京都大学の学生時代に大学内のゲイの交流活動で2人は知り合っている。年齢は南くんの方が1歳ほど年上だ。たまたま同じ大阪の高校出身であることに気がついて、気が合うようになり付き合うようになった。その後、2人ともに弁護士になって2011年4月には結婚式をあげている。本の内容は、二人の出会い、就職と結婚、弁護士の仕事、家族との関係などを、同性愛者としてまた同性愛者同士で一緒に生きていく上で起こったことについて書かれている。

 この本を書店で見かけたら、是非開いて欲しいページがある。それは「P.49」だ。そのページには、南くんの誕生日を祝っている写真(2001年10月撮影)がある。この写真が何とも言えず素敵な写真だ。ボクはこの本を読み終わってからも、何度もP.49の2人の写真を見直してしまった。テーブルの上には、南くんのために作った吉田くんの手料理が並べられている。そして何と花瓶がないからとペットボトルに花が活けてある。吉田くんは写真を見て「パスタの盛り付けが雑なので愕然としてしまう」(P.59)と書いてるけど、そんなこと写真を見ている人には気にもならない。

 だって顔を寄せ合って写っている2人が本当に幸せそうだから……

 この本の中で何度か触れられているけど、吉田くんは他人のために料理を作るのが好きだそうだ。ボク自身も料理はよく作るけど、いつも自分のためだけに作っている。誰かのために料理を作ったことは一度もない。ボクが作る料理は、効率よく作れる料理。健康を損ねないように栄養が偏らないような料理だ。ただ自分のためだけに料理を作っている。この本を読んでいて誰かのために料理を作ってみたくなった。それだけ吉田くんが南くんのために作った料理が並べられた写真は素敵だった。

 とにかくこの本を見かけたら、P.49の写真だけは見て欲しい。きっと見てるだけで幸せな気持ちになれると思う。

 この本を読んでいて、2人は京都大学に通っていたこともあって、ボクの行った京都市内のハッテン場にも行ったことがあるのかな?とか思ったりもした。南くんは大学生になって大阪の実家から京都に出て一人暮らしをしている。その一人暮らしの中、インターネット経由で出会った同年代の大学生と性的な体験をしたと書いている(P.25~26)。ボクが大学生になって京都に引っ越したタイミングで、すれ違うようなタイミングで南くんは大阪の会社に就職しているので、直接どこかで出くわしたことはないとは思う。

 この2人は京都大学内のゲイ同士の交流活動を通して知り合っている。ボクも大学のサークルを探している中、ゲイ関連の同好会があるのに目についた。でもボクは大学生になってからゲイであることを隠して生きると決めていたから、その同好会にも入ることをせずにずっと隠して生きてきた。

 最近……その選択は正しかったのだろうか?と思うことが多い。

 周囲にカミングアウトせずにインターネットによってゲイの世界を知ることはできたけど、何だか地上の世界よりは地下の世界に潜ってしまった気がしている。もちろんカミングアウトすれば地上の世界でバラ色の人生だとは思わない。そもそも中学時代や高校時代はゲイであることを隠して生きて、大学時代に一人暮らしを始めてからカミングアウトするパターンが多いみたいだけど、ボクは何故か逆だったからな……と諦めの気持ちもある。

 もし大学時代も引き続きカミングアウトし続けていたら……P.49の写真に映った2人のような人生も起こり得たかもしれない。そう思いながらあの写真の2人を見ていると、何だか泣けてしまった。

 この本のレビューから話は少し変わる。

 この『僕たちのカラフルな毎日』という本だけど、先日に別の記事に書いた福岡天神のジュンク堂のLGBT特集コーナーに置いてあって興味を持ったので購入して読んでみた。そのジュンク堂のLGBT特集の棚だけど、12/4に福岡サンパレスであったライブに行くために天神を経由したのでついでにジュンク堂に寄ってみた。ボクが17時くらいに3階のLGBT特集の棚に行ってみると立ち読みしている人は誰もいなかった。それからボクが棚の本を眺めていると、男性の書店員さんが棚の前に段ボールを置いて組み立て始めて、棚の本を取り出して片づけ始めた。

 そっか……このLGBT特集は今日で終わりなんだ。

 ボクは3回もこの棚の前に立って本を見てたんだけど、他の人はみんな視線に入っても無視して素通りして行った。誰か一人ぐらいは立ち読みしている人を見かけたかったけど、最後まで会えなかった。ボクが棚の前にいると書店員さんが片付けにくいと思ったので立ち去ることにした。きっとLGBT特集の棚を設置するまでに多くの人が関係していると思う。どんな人達が関係しているのか分からないけど、ボクはあの棚の前に立って色々なことを考えさせられた。関係者の人たちに感謝したい気持ちで一杯だ。