ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

出逢いたくなかった人<2>

 ボクの目の前では20代後半の痩せている男性が笑っていた。いや……ボクの目の前にはそんな男性は存在しなかった。目の前で笑っている人はどんなに若く見積もっても30代後半もしくは40代にも見えるぐらいだった。そして痩せているどころか太っていて、お腹の肉はたるんでて顔もぽっちゃりとしていた。そして短髪で髭をはやしていた。

 やっぱり会った瞬間に思ったけど、メールを送って来た人と別人なんじゃないかな?

 そう思ったけど相手に対して失礼になるので口に出すのは止めた。「見た目はともかくきっと性格はいい人かもしれない」と思うことにした。

「君も一緒に渡ればよかったのに?」
 
 ニコニコと笑いながら横断歩道を渡り終えたボクに近づきながらそう言った。京都市内のメイン道路にあたる堀川通りを帰宅ラッシュ時に横断するなんて冗談じゃないと思った。周囲を歩いている人達から「こいつの知り合いなの?」という冷たい視線がボクにも向けられていた。きっとさっき彼が道路を横断しているのを見かけた人たちに違いない。

「あんなことしたら危ないですよ! 轢かれますよ!」

 ボクは勇気を出して注意したけど、「大丈夫!大丈夫!」と彼は笑っていた。

「それで……なんでこっちの歩道に移動したんですか?」
「特に意味はないよ」

「特に意味はないのに横断するなよ!」と注意したかったけど言葉を飲み込んだ。何だか彼の笑顔を見ていると「俺ってすごいだろ?」と子供ぽく自慢しているように見えた。ボクが感心しているどころか呆れていることに全く気がついていないようだ。

「君……可愛いね」

 彼の視線が急に舐めるように自分に向けられていた。褒められたのにちっとも嬉しくなかった。

「どこかでご飯でも食べますか?」

 ボクは話をそらすためにそう言った。そもそもボクらはメールのやり取りをしていて、「どっかで食事でもしながら話しでもしよう」というのが出会った目的だった。

「う〜ん。ご飯もいいけど、そこのビルに行かない?」
「そこのビル?」

 彼の視線の先にはいくつかの会社のテナントが入っているビルがあった。ビルの玄関には仕事帰りのサラリーマンが何人かいた。

「そこのビルのトイレでヤらない?」
「えっ……トイレで?」
「一緒にトイレに行こう?」
「トイレとか絶対に嫌なんですけど……」

 彼からの思ってもみない提案に思わず驚いてしまった。さっきから彼と会ってから驚かされてばかりだ。それに一般の人が出入りしているビルのトイレでヤるなんて冗談じゃなかった。下手するとガードマンに通報されて警察署行きだ。

「いいじゃん。トイレで君のケツを掘りたい!」

 彼の舐めるような視線を向けたままボクに体を寄せて来た。ボクは近づいてくる彼から離れて距離を取った。

 前言撤回する。「見た目はともかく性格も最低だ」と思った。

<つづく>