ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

現在進行形の同性恋愛<1>

「ねぇねぇ神原くんって結婚してるの?」

 ボクらはある部署に新システムを導入するために打ち合わせしている最中だった。参加メンバーはボクを入れて5人。男性はボクともう一人で残りは女性だった。その会議で仕切り役をしていた女性社員から言われた言葉だった。ボクは一瞬だけど回答に躊躇した。そして「あぁ……またこの質問なのか?」と思った。いったい30歳を過ぎた頃から何度同じ質問を受けたことだろう。

「結婚してないですよ」

 ボクは隣の席に座ってる男性を意識しながらそう答えた。いつもなら即答できるけど、今日はいつもと違う事情があった。

「ほら!やっぱり結婚してないじゃん」

「でも私は結婚してるって言ってたよ」

「これはKさんに教えないと!」

 ボクの言葉を受けて女性たちは勝手に盛り上がっていた。ボクが結婚しているという話は定期的に職場の中で噂になる。たった今、会話の中で女性の名前が出たような気がしたけど何の興味もなかった。ボクは周囲に気がつかれないように隣に座っている男性をちらりと盗み見た。その男性は盛り上がっている女性たちを笑いながら優しく見守っていた。彼が何も言ってこないのがせめてもの救いだった。

「神原くんってKさんのことどう思う?」

 ボクは女性たちの押しの強さにたじろいでいた。Kさんは他部署の女性だった。Kさんの顔を頭に思い浮かべた。確かボクより1歳ほど年上で頭が良くて芯のある女性で割と素敵な女性だった。何度か仕事上の会話をしたことはあるけど好印象だった。でもボクはゲイだから彼女に恋愛感情を抱くことは絶対になかった。この女性たちはきっとKさんのことを紹介しようとしてるんだろうと思ったので先手を打つことにした。

「家事とか何でもできるから一人で大丈夫なんです!」

 深刻にならないように笑いながらそう言った。

「えぇ〜Kさんと絶対お似合いだと思うよ!」

 女性たちは盛り上がって会話を続けていた。ボクは「もう打ち合わせは終わったんだよね?」と思って資料を片付けて席を立った。ボクが席を立つのに合わせて隣に座っていた男性も席を立った。ボクらは女性たちを会議室に置き去りにしてそれぞれの部署に戻ろうと部屋を出た。

「いや〜神原さんも大変ですね」

 隣に座っていた男性は、廊下を一緒に歩いていると、そうボクに話しかけてきた。彼はボクよりも4歳年上で新規システムを導入する部署で働いていた。

「そうですね……」

 彼の顔を少しだけ見ながら言った。でも彼の笑っている顔からは何も感じ取れなかった。それから彼の部署のドアの前で「お疲れ様でした」と言って別れた。

 ボクが好きなのはあなたなんですけど……

 エレベーターに乗って壁にもたれ掛かって、彼のことを思い浮かべながらそう心の中でつぶやいていた。

<つづく>